研究課題/領域番号 |
21K03340
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
鈴木 登志雄 東京都立大学, 理学研究科, 准教授 (30235973)
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研究分担者 |
隈部 正博 放送大学, 教養学部, 教授 (70255173)
宮部 賢志 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (00583866)
吉冨 和志 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (40304729)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | アルゴリズム的ランダム性 / 計算可能解析 / 実閉体 / ハウスドルフ次元 / ゲージ積分 |
研究実績の概要 |
2021年5月、6月、8月、11月、2022年1月、2月、3月に鈴木・隈部・宮部によりオンラインでセミナーを行った。弱計算可能かつノン・ランダムな実数全体は実閉体をなすことが知られている。その根拠となる(収束についての)命題中に現れるチャイティン・オメガを一般の弱計算可能実数に置き換えることが研究進捗の鍵になると考えた。この目標に向かって Rettinger et al. (2001) Monotonically computable real numbers ならびに Zehn and Rettinger (2004) On the extensions of Solovay reducibility の方法を拡張することを軸に、さまざまな方法を試した。また、2021年12月21日にRIMS共同研究(公開型)「証明と計算の理論と応用」が京都大学数理解析研究所で開催された。代表者の鈴木は対面式で参加し、講演「Saks and Wigderson (1986):2007 年以降のゲーム木研究の背景として」を行なった.この講演は、有本宗史・栗田亮也・清水泰良3氏の結果を統合・拡張することによって、弱い対称性をもつ多分木均衡値についてSaks and Wigderson (1986)の証明を再構成するプロジェクトについてのものである。同研究集会に、宮部はオンラインで参加し講演した。吉冨は東京都立大学の堀田氏とヒルベルト空間上のコンパクト作用素について共同研究を行い、2022年3月に擬微分作用素と対数Schattenクラスについての論文をオンライン出版した。宮部はベルヌーイ測度に対する予測誤差の収束測度について、2022年3月の日本数学会年会で発表した(ただしコロナ禍により年会の対面開催は中止となり、アブストラクトの公開のみとなった)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
埼玉大学で予定されていた日本数学会2022年度年会の対面開催が急遽中止になったことに象徴される通り、2021年度はCOVID-19による混乱や業務量増加が続いた。そのため、主要な課題への取り組みは遅れ気味である。ただし複数回に渡るオンライン研究打ち合わせの成果は蓄積している。また、主要課題への取り組みが遅れ気味であることへの対策として、研究代表者はゲーム木均衡値についての研究も並行して行なっている。一方、吉冨による解析学からのアプローチは順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
左c.e.実数の世界では、強いK順序(おおまかに言うと、コルモゴロフ記述量の差が無限大に発散することによって定まる、実数の計算論的な順序)および強いS順序(ソロベイ還元の条件を強めた条件によって定まる、実数の計算論的な順序)、通常のソロベイ還元(に「ソロベイ次数が等しくない」という条件を加えた「小なり」型の順序)の間に、この順に含意関係が成り立つ。ここでの強いS順序の概念を(左c.e.実数よりも広い)弱計算可能実数の世界へ拡張することを目指す。2021年度のオンラインセミナーの結果を活用し、この拡張をうまく行うことによって研究計画の進捗をはかる。
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次年度使用額が生じた理由 |
東京では2021年度のうち、およそ9か月に渡って新型コロナ対策の緊急事態宣言・まん延防止等重点措置が続いた。このため我々の活動は制約を受けた。とくに対面型の研究打ち合わせ・研究集会参加の機会が当初の予想以上に少なくなった。新年度においては新型コロナに係る状況を注視しつつ、対面型研究打ち合わせ・研究集会参加への支出、もしくはオンラインでの研究打ち合わせのための機材充実を行う。
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