超伝導の理論であるエリアシュベルグ理論におけるエリアシュベルグ方程式を解くことは極めて強く切望されているにもかかわらず、連立の非線形積分方程式であるため、解析的にほとんど解けていません。したがって、エリアシュベルグ方程式の解の存在や一意性、解の温度についての性質を解析的に示すことは極めて困難です。連立の非線形積分方程式であるエリアシュベルグ方程式に不動点定理を応用して、解の存在や一意性、解の温度についての性質を導きますが、その際、解が属するであろうと期待される適切なバナハ空間と、解が温度についてのある種の性質をもつであろうと期待される適切な部分集合を慎重に選ぶ必要があります。 そこで、電子・フォノン間の結合定数が非常に小さい場合であって、さらに外部磁場が存在する場合について、令和5年度は調べました。エリアシュベルグ方程式に現れているポテンシャルに対して適切な条件を課して、エリアシュベルグ方程式を扱うべきバナハ空間とその部分集合を適切に設定して、陰関数定理を応用しました。 このようにして、電子・フォノン間の結合定数が非常に小さい場合であって、さらに外部磁場が存在する場合について、エリアシュベルグ方程式の解の存在と一意性について数学的な証明を与えることに遂に成功しました。さらに、解の温度や外部磁場についての連続性や偏微分可能性、さらには予想されていなかった性質をも導き出すことができました。 この研究成果を国際会議で招待講演を行いましたし、さらに、数学会でもこの研究成果を発表しました。現在はこの研究成果を論文として纏めています。
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