研究課題/領域番号 |
21K03353
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
出原 浩史 宮崎大学, 工学部, 准教授 (50515096)
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研究分担者 |
松岡 常吉 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90633040)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 燃焼 / 数理モデル / パターン形成 / 反応拡散系 |
研究実績の概要 |
火災の初期段階で見られる低温状態でくすぶり続けるくん焼は、酸素濃度が比較的低い状況でも燃焼状態が継続しうるため非常に危険である。くん焼は不安定な燃焼状態であるため、実験も難しく理解は十分には進んでいないのが現状である。近年、画期的な実験装置が考案され、安定した実験データを収集することができるようになってきた。その結果、くん焼の振る舞いは非常に複雑であることが明らかになるつつある。本研究では、くん焼の複雑な振る舞いがなぜ現れるのかというそのメカニズムを理論的に解明することを目指す。くん焼のダイナミクスを記述する数理モデルの構築と、そのモデルの理論解析を通して、複雑燃焼が生じる起源を探索する。 今年度の研究計画は、くん焼実験に現れる複雑な燃焼状態を記述する数理モデルの構築である。これまでの向流燃焼の理論研究で得た知見を生かし、くん焼実験を記述する数理モデルの構築を試みた。燃焼の3要素である紙の密度、酸素濃度と温度のダイナミクスを記述する3成分反応拡散-移流系としてモデル構築を行った。くん焼実験が向流燃焼と大きく異なる点は、酸素が実験装置の中心から放射状に流れることと、紙の中心に着火するという2点である。これらを考慮して数理モデルを構築した。 また、その数理モデルの空間2次元の数値シミュレーション結果と実験結果との比較を行い、構築した数理モデルの適切性の検証も行った。さらに、数値シミュレーションで採用するパラメータの妥当な範囲の検討も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画はくん焼実験を記述する数理モデルの構築とその数値シミュレーション結果と実験結果との比較であった。当初の研究計画どおり数理モデルの構築はできており、その数値シミュレーションの結果、実験と非常に類似したダイナミクスが得られている。さらに、得られた数理モデルの解析も一部進めており、複雑な燃焼が観察される背景となる数理構造を明らかにしつつある。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進の方策として次の2点を考えている。 (1) 複雑な燃焼の起源の探索 くん焼の複雑な振る舞いがなぜ現れるのかというそのメカニズムを理論的に解明するために、数理モデルの計算機を援用した解析を試みる。特に、不安定化の期限となる2次元一様進行波解の安定性解析を計算機を併用しながら行い、2次元非一様燃焼パターンの起源となる不安定化を引き起こす固有値の挙動を調べる。 (2) 構築した数理モデルから縮約方程式の導出 今年度に構築した数理モデルは3成分反応拡散-移流系であり、理論解析を行うには成分が多く、解析には多くの困難が伴うことが予想できる。そこで、3成分反応拡散-移流系をより扱いやすい方程式へ縮約することを試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍であったため、ほとんどの出張ができなくなり、代わりにオンラインミーティングとなったため、旅費として計上していた予算を使うことができなかった。次年度は次第に出張が緩和されると考えられるため、旅費として利用したいと考えている。また、計算機による数値シミュレーションを効率よく遂行するために新たな計算機を購入する費用に当てたいと考えている。
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