• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2021 年度 実施状況報告書

考古・民族誌データを解析するための新しい確率過程モデリングとその拡散近似

研究課題

研究課題/領域番号 21K03357
研究機関明治大学

研究代表者

若野 友一郎  明治大学, 総合数理学部, 専任教授 (10376551)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワードマルコフ連鎖 / 集団遺伝学 / 拡散過程
研究実績の概要

最新の考古学・民族史学研究では、定量的データの記載が進みつつあり、集団遺伝学で発展
した解析手法を援用する形で、解析が行われるようになりつつある。一方で、文化進化は遺伝進化にはない特徴を持ち、その結果、集団遺伝学で整備されてきた木村の拡散方程式などの手法が、直接は適用できない部分がある。例えば、DNAは突然変異によって塩基対が変化することはあるが、消失することはまれである。しかし文化は、継承の失敗によって消失することが多い。その結果、固定状態と絶滅状態が、文化進化のモデルにおいては非対称となり、例えば標準的な集団遺伝学で計算される固定時間の概念などが、文化進化モデルでは存在しなくなる。
本年度は特に、スペクトルの期待値の理論式に着目し、ある種のスケールリミットのもとで、その簡潔な近似的表現を得た。この近似的表現は、かなり煩雑な表現をもつ厳密解をよく近似することを数値的に確認した。スペクトルは、考古学・民族史学データとしては、同じ文化がどの程度多くの集団で使われているかを示す指標である。世界には、多くの集団で使われる普遍的な文化要素もあれば、ごく一部の集団でしか見られない稀な文化要素もある。それらの分布は、文化伝達の仕組みと確率的揺らぎによって決定されていると考えられるが、スペクトルの簡潔な近似的表現が得られたことにより、観察される分布から文化がどのように伝達されてきたかについての推測が可能となることを意味している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

ある特殊なスケールリミットでは、形式的に拡散方程式が導出されるが、このリミットは現実の民族誌考古学データに近いとはいいがたい。より広いクラスについての解析的扱いを模索中ではあるが、初年度では大きな発展は得られなかった。コロナ禍もあり、この分野の専門家との研究交流がなかなか進まなかったことも、背景にある。

今後の研究の推進方策

この分野の専門家との研究交流を活発化させる。また、より大規模なシミュレーションを行い、パラメータがどのような構造を持つとき、スペクトルがどのような分布に従うのかについて、まず数値的な知見を得たうえで、その解析的扱いについてより精緻に検討する。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウィルスによって出張などが中止/オンライン化されたため。
次年度以降、積極的に研究交流に使用する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] Hominin forager technology, food sharing, and diet breadth2022

    • 著者名/発表者名
      Aoki Kenichi、Wakano Joe Yuichiro
    • 雑誌名

      Theoretical Population Biology

      巻: 144 ページ: 37~48

    • DOI

      10.1016/j.tpb.2022.01.003

    • 査読あり / オープンアクセス

URL: 

公開日: 2022-12-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi