研究実績の概要 |
リーマンショックによる金融危機後に重要となった、短期金利モデルの任意の2点間の短期金利曲線の積分の期待値の計算とそれに依存するxVAと呼ばれるリスク指標の高速計算に資する数値計算手法の一つとして, 10年程前にLyons-Littererによって提案された再結合測度法と呼ばれる手法と、申請者が過去に考案したKLNV法と呼ばれる高次弱近似アルゴリズムを組み合わせたものを提案しようというのが我々のプログラムである. 本年は以下の結果を得た. [1]離散KLNV法によって生成した離散測度を再結合測度法によって測度の能率を保ったままその台の個数を減少させるというアルゴリズムを開発した. [2] 前述のアルゴリズムを実際のファイナンスに現われる確率的ボラティリティモデルの下での資産価格計算に適用してその数値例を得た. [1]については, KLNV法によって構成される有限台の高次近似測度(高次の能率まで標的測度と一致している離散測度)に測度再結合法を適用するという操作を反復することで最終的な測度を得るが, この最終的な測度の台の個数が多項式増大でありながら高次近似の條件をみたす様にする新しい條件(以下パッチ條件と呼ぶ)を発見した. このパッチ條件は再結合の際に対象とする測度を有限個の部分測度に分解する方法をの構成にも資するものであり, 理論的のみならず実務的な観点から意義がある. またこの分解の具体的な手法もここで新しく開発した. この分解は確率過程の空間次元が2以上の場合には非自明であり, 有効な方法はこれまで知られていなかった. 我々は測度の台の集合の主成分軸に垂直な超平面での分割をパッチ條件が満されなくなる迄再帰的に行なうという方法でこれを解決した. この方法は空間次元が2以上の場合に自然に適用可能である. [2]については未だ開始したばかりの段階で実用的な精度の計算結果を得た.
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