研究課題/領域番号 |
21K03367
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
田中 環 新潟大学, 自然科学系, 教授 (10207110)
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研究分担者 |
山田 修司 新潟大学, 自然科学系, 教授 (80331544)
劉 雪峰 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (50571220) [辞退]
齋藤 裕 新潟大学, ビッグデータアクティベーション研究センター, 特任准教授 (50806057)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 集合最適化 / ベクトル最適化 / 集合値写像 / スカラー化関数 / 半連続性 / ファジィ集合 / 集合の優劣 / 漸近関数 |
研究実績の概要 |
人工知能や機械学習の研究は今日では大変重要なテーマとなっていて,複雑な事象のモデル化・解析が行われるようになってきた。しかし,どのようなモデル化をするにせよ,何らかの評価や数理的意思決定が各プロセスで行われる。評価方法が多様な価値観に基づくため,様々な手法が提案されている。特に,実数の全順序やベクトルの半順序を一般化した,集合の優劣に基づいた集合最適化というものがある。本研究の第1の目的は,先行研究で明らかになった優劣構造を持つ集合族に対する集合関数の持つ性質をもっと一般的な枠組みで体系的に解明することである。第2の目的は,集合最適化に対する数値計算アルゴリズムの開発を 実用レベルまで発展させ,数値解析などの分野へ応用することである。 本研究は,研究代表者らが行ってきた先行研究成果の延長線で研究をさらに展開し,アルゴリズムの専門家とアルゴリズム開発を行い,数値解析の専門家と数値解析への応用研究について大学院生も含めて4年間の共同研究に取り組む計画である。2年目は大学院生とともに,集合関数と集合値写像の合成写像に関する解析的な理論研究に関する結果を大きく進展させることができた。3年目に当たる令和5年度は,ファジィ集合関係の結果を通常のファジィ集合から区間値をとる直感的ファジィ集合へ一般化することができた。一方,アフリカからの留学生とともに発展途上国における学校の最適配置問題を具体的なデータを現地で収集し,それを集合最適化として定式化しようと試みた。また,大学院生とともに漸近錐と漸近関数の性質を詳しく調査し,どのように最適化に利用されているかの原理が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの本研究の進捗状況が理論的な内容にとどまり,数値解析や数値実験と連携する内容まで進まなかったため,本来の研究計画からはやや遅れている。 しかし,理論的研究の部分については,ファジィ集合関係の結果を通常のファジィ集合から区間値をとる直感的ファジィ集合へ一般化できたこと,ベクトルの優劣を特徴づける拡張実数値関数の方向微分を利用して,集合最適化の最適性の必要条件を求める方法の見通しが立ったことから,集合値関数や集合自身を直接評価の対象とする場合,つまり,集合最適化に対する数値計算アルゴリズムの開発の方針が立ったことから前年度よりは進捗したと考えている。また,次年度からは本学のビッグデータアクティベーション研究センター・特任准教授の協力を得る見通しが立ったので数値実験も進めることができると考える。
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今後の研究の推進方策 |
(1)先行研究では何通りかの集合関係に関する最適性が提案されている。特に,2022年にJahn氏が発表した,ベクトルの優劣を与える拡張実数値関数(優劣の特徴づけ関数)の方向微分による集合の最適性の必要条件の結果を拡張する。また,優劣の特徴づけ関数には様々な可能性があるので,具体的な関数をいくつも用意して,具体例で最適性必要条件を確認する予定である。 (2)海外の共同研究者や大学院生らとともに前年度までに得られた拡張半連続性の遺伝結果を利用して集合値写像に対するFan-Takahashiの不等式などの結果を一般化する。 (3)集合の比較を行う数値実験に関するアルゴリズムの開発を齋藤特任准教授と行う。学生にも数値実験を手伝ってもらう。可能であれば,発展途上国における学校の最適配置問題に応用したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度の研究で期待される研究成果が得られなかったため旅費として多くは使用できなかった。また,大学院生による数値実験もできなかったため,謝金としてほとんど使用しなかった。最終年度に当たる今年度は,本研究の内容をよく理解している非常勤研究員を雇って研究を進める計画であり,本研究費を人件費として充てる予定である。
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