• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2021 年度 実施状況報告書

ファン・デル・ポール境界条件をもつ双曲型方程式の同期化制御とその秘匿通信への応用

研究課題

研究課題/領域番号 21K03370
研究機関神戸大学

研究代表者

佐野 英樹  神戸大学, システム情報学研究科, 教授 (70278737)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード双曲型偏微分方程式系 / ファン・デル・ポール境界条件 / 同期化制御 / オブザーバ / 可観測性 / 秘匿通信 / バックステッピング / 半群
研究実績の概要

本研究では、情報化社会で重要なセキュリティの強い秘匿通信システム(情報信号を暗号化/復号するシステム)を構築するために、カオス的な振動現象を引き起こす双曲型偏微分方程式に着目して、その同期化制御を取り上げている。本研究の目的は、カオスを発生させる非線形境界条件(具体的にはファン・デル・ポール境界条件)を有する双曲型偏微分方程式に対して、同期化のための制御則を設計し、それを用いて効率的でかつ安全性の高い秘匿通信システムを構築することである。
常微分方程式で記述されるシステムは集中定数系と言われ、その範疇ではカオス同期化を利用した秘匿通信システムの構築が1990年代半ば頃から多くの研究者によって考案されてきた。いずれもカオス的に振る舞う信号に通信情報を埋め込んで送信し、カオス同期化を利用してそれを取り出すという考え方に基づいている。それに対して、分布定数系のカオスを利用した秘匿通信システムの構築に関しては、佐野・若生・谷口の先行研究(SICE Trans. 2021年2月)があるが、そこでは双曲型偏微分方程式系の時空間異方性までは考慮されていなかった。すなわち、先行研究は分布定数系のカオスが秘匿通信に利用できるという可能性を示すものであり、セキュリティの強さを追求するものではなかった。令和3年度は時空間異方性を考慮した双曲型偏微分方程式系に拡張し、秘匿通信システムの安全性を数値実験にてError Function Attack (EFA)関数を用いて検証した。その結果、異方性そのものが暗号鍵として有用であることが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

令和3年度は時空間異方性を考慮した双曲型偏微分方程式系に拡張し、秘匿通信システムの安全性を数値実験にてError Function Attack (EFA)関数を用いて検証した。その結果、異方性そのものが暗号鍵として有用であることが明らかになった。
このことは「研究実績の概要」に記しているが、現在、その成果を論文誌に投稿中であり、査読結果を踏まえて改訂版を作成しているところである。

今後の研究の推進方策

令和4年度は、セキュリティに対してさらに強いシステムを構築するために、ファン・デル・ポール境界条件に積分項を追加した双曲型偏微分方程式系に対して、同期化制御問題を取り上げる。同期化システムの構築にはボルテラ・フレドホルム型積分変換ならびに半群理論を用いる。また、秘匿通信システムの安全性を数値実験にてEFA関数を用いて検証する。

次年度使用額が生じた理由

令和3年度に制御系設計用ソフトの購入を見送ったため、「次年度使用額」が生じた。
令和4年度は、令和3年度よりも扱うシステムが難しくなるため、偏微分方程式論やカオス理論に関係する図書が必要であり、それに関する予算が8万円かかる。また、数式処理用ソフトを購入するために20万円、国内で研究成果を発表するために15万円、論文誌に投稿する際に25万円、文具類代として2万円程度の予算がかかることを見込んでいる。
なお、「次年度使用額」の合計欄(260,543円)は、令和3年度に購入を見送っていた制御系設計用ソフト代であるが、これについては令和4年度に購入予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] Stability analysis of heat exchangers with delayed boundary feedback2021

    • 著者名/発表者名
      H. Sano
    • 雑誌名

      Automatica

      巻: 127 ページ: Paper No.109540

    • DOI

      10.1016/j.automatica.2021.109540

    • 査読あり
  • [雑誌論文] State estimation of Kermack-McKendrick PDE model with latent period and observation delay2021

    • 著者名/発表者名
      H. Sano and M. Wakaiki
    • 雑誌名

      IEEE Transactions on Automatic Control

      巻: 66 ページ: 4982-4989

    • DOI

      10.1109/TAC.2020.3047360

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Secret communication systems using chaotic wave equations with neural network boundary conditions2021

    • 著者名/発表者名
      Y. Chen, H. Sano, M. Wakaiki, and T. Yaguchi
    • 雑誌名

      Entropy

      巻: 23 ページ: Paper No.904

    • DOI

      10.3390/e23070904

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 分布定数系のカオスとその応用について2021

    • 著者名/発表者名
      佐野英樹・若生将史・谷口隆晴
    • 雑誌名

      システム/制御/情報

      巻: 65 ページ: 305-310

  • [雑誌論文] 双曲型システムの展望―境界制御/境界観測系の新しい定式化2021

    • 著者名/発表者名
      佐野英樹
    • 雑誌名

      システム/制御/情報

      巻: 65 ページ: 336-339

URL: 

公開日: 2022-12-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi