研究課題/領域番号 |
21K03386
|
研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
山下 智樹 長岡技術科学大学, 産学融合トップランナー養成センター, 特任准教授 (60793099)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 結晶構造探索 / 機械学習 / マテリアルズインフォマティクス / LAQA |
研究実績の概要 |
結晶構造探索手法のLAQAでは、強化学習により最終的にエネルギーがより低くなりそうな候補を選択して優先的に最適化することで、不要な最適化計算を行うことな く効率的に安定構造が探索可能となる。これまでは第一原理計算から得られるエネルギーと原子に働く力の情報から算出されるスコア関数を評価することで優先度を決めていたが、応力テンソルをスコア関数に含めないとデータによっては探索効率が悪くなることを見出した。 結晶構造探索ツールのCrySPYと第一原理計算ソフトのQuantum ESPRESSO(QE)を連携させてLAQAを使用するため、QEの最適化ステップごとのエネルギー、原子に働く力および応力テンソルを抽出するコード開発を行った。 Si、Al2O3、NaClおよびSrCO3の系でランダムサーチを行い、構造最適化における各ステップごとのエネルギー、原子に働く力および応力テンソルの第一原理計算のデータを取得した。このデータを用いて、スコア関数に応力テンソルを含めた場合と含めなかった場合でLAQAの探索効率を比較した。応力テンソルをスコア関数に入れることで一部の系では探索効率が下がるが、その差は重要でないほど小さいことがわかった。また、応力テンソルを含めないスコア関数では探索効率が悪くなるような系においても、応力テンソルをスコア関数に含めることで探索効率が劇的に改善される結果となった。応力テンソルを含めることで汎用的で高効率なスコア関数が開発できたと言える。この研究成果をScience and Technology of Advanced Materials: Methodsにて発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定では、2021年度はCrySPYにおけるQuantum ESPRESSOの最適化ステップごとのデータ抽出のためのコード開発と様々な系での第一原理計算の最適化ステップのデータ収集を行う計画であった。コード開発は予定通り完了し、第一原理計算のデータもSi、Al2O3、NaClおよびSrCO3の4つの系だけではあるが収集することができて、2022年度に開始予定であった応力テンソルを含めたスコア関数の開発に着手し、スコア関数を大幅に改善するに至り、論文として発表することもできた。
|
今後の研究の推進方策 |
応力テンソルを含めた新しいスコア関数の基盤は開発することができたが、細かいパラメータなどの微調整を含めて、さらに第一原理計算のデータを収集し、LQAQの探索効率をチェックすることで汎用性の確認を行う。また、これまでは比較的原子数が少ない系で探索効率の検証を行ってきたが、原子数が多い複雑な系でも効率よく探索できるかどうかの検証も行う。 計画が順調に進んでいるので、2023年度に開始予定であったソフトウェア化およびマニュアル整備を2022年度に開始する。開発したスコア関数を結晶国造探索ツールCrySPYに取り込んでバージョンアップを行い、実際に専門家以外の人でも簡単に使いこなすことができるようにマニュアルを整備する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
半導体価格の高騰により計算機クラスタのノードを2台購入する予定がが1台しか購入できなかった。この分は2022年度に購入予定である。また旅費として申請していた費用はコロナ禍で未使用になった。論文掲載費用も予定していたが、公開時期の兼ね合いで支払いが次年度になった。
|