研究実績の概要 |
本研究プロジェクトでは、原子集団がレーザーで冷却される過程における分子運動論(エルゴード理論)を構築することが目標である。本年度は、希薄極限に対応した状況(1粒子のダイナミクス)を考え、そのエルゴード特性を明らかにした。特に、サブリコイルレーザー冷却の1原子ダイナミクスの確率モデルにおける無限測度エルゴード理論を示した。具体的には、力学的エネルギーの時間平均の揺らぎの理論を構築した。この揺らぎには、モデルのパラメータに応じて、揺らぎの分布関数に転移があることがわかった。それらの結果の一部は Phys. Rev. Lett. [E. Barkai, G. Radons, and T. Akimoto, “Transitions in the ergodicity of subrecoil-laser-cooled gases,” Phys. Rev. Lett. 127, 140605 (2021)] 及び J. Chem. Phys. [E. Barkai, G. Radons, and T. Akimoto, “Gas of sub-recoiled laser cooled atoms described by infinite ergodic theory,” J. Chem. Phys 156, 044118 (2022)] に出版された。現在、サブリコイルレーザー冷却の1原子ダイナミクスの他のモデル(三つの確率モデル)の結果をまとめ、Phys. Rev. E に投稿中である。また、多体効果の影響を見るため、不均一環境下での単純排他過程の研究も進めている。現在まで、不均一なエネルギーランドスケープを変えることで、流速や拡散係数がエネルギーランドスケープに強く依存することがわかってきた。
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