研究課題/領域番号 |
21K03416
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
齋藤 晴雄 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (60235059)
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研究分担者 |
澁谷 憲悟 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (20415425)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 陽電子 / ポジトロニウム / 原子散乱 / 運動量移行断面積 / スピン軌道相互作用 / 計数率 / デジタイザ / 逆ラプラス変換 |
研究実績の概要 |
ポジトロニウム(Ps)は陽電子と電子からなる純レプトン系の水素様原子であり、最も軽い元素(原子番号0)と見做せることから、量子電磁気学や量子化学計算のベンチマークに用いられる。本研究の目的は、Ps-He散乱における衝突パラメータ(運動量移行断面積、散乱長、有効到達距離)を実験的に有効数字2桁以上の精度で明らかにし、提唱されている理論計算のうち、最も精確に現象の本質を再現するモデルを決定することである。 実験においては、研究代表者らが既に実施したPs-Xeの測定系を改良し、Ps-Xe-Heの三元系の測定を行う。Ps-He散乱の研究にXeを介在させるのは、Ps-Xe散乱におけるPsのスピン転換反応の特性(S波散乱では禁制遷移となること)を利用して、Psの運動エネルギーを推定するためである。つまり、Xeは温度計として機能する。 本研究の初年度(3年間)にあたり、Heに対して十分な封止力を持つ試料チェンバーを用意し、またXe-He混合ガス(後者が10%)を入手して、測定を開始した。また、従来のデジタルオシロスコープを用いるデータ収集法では、計数率の上限が500cps程度で、測定点を1点増やすのに2週間ほど要するため、デジタルオシロスコープをデジタイザに置き換えることで1000cps程度の測定を行えるように改良した。これにより、従来と同等のデータ収集が、1週間程度で済むようになった。 また、測定データからPsの消滅率を決定するアルゴリズムとして、反復的な数値計算による逆ラプラス変換法を検討し、検討結果を査読論文として出版した。 来年度(R4年度)には、Ps-He散乱における衝突パラメータの決定を行い、He以外のガス(H2など)についても検討を開始する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り実験系を組み立てて測定を開始することが出来、またデータの収集効率を従来の2倍にすることにより、測定期間を短縮し研究進捗を早められる見通しを得た。また、データ解析方法について、先行して論文を出版することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
予定通り進捗し、測定・解析に特段の支障はない。来年度(R4年度)は、Ps-He散乱における衝突パラメータの決定を行い、He以外のガス(例えばH2ガス)についても検討を開始したい。 なお、共同研究者の澁谷憲悟氏が、国の機関(科研費制度なし)への異動に伴い、本研究体制から退く予定である。
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