研究課題/領域番号 |
21K03419
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
濱本 雄治 大阪大学, 工学研究科, 助教 (30584734)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 第一原理計算 / 機械学習 / ガウス過程回帰 / 進化的アルゴリズム / 二次元物質 / シリセン / ボロフェン / ボロファン |
研究実績の概要 |
進化的アルゴリズムとガウス過程回帰に基づく大域的構造探索プログラムGOFEEを用いて、2021年度は銀(111)表面上におけるシリセンの安定構造の探索を行った。シリセンのハニカム格子構造を再現するために銀(111)表面の√7×√7、3×3、2√3×2√3、√13×√13、4×4、√19×√19、√21×√21単位胞を仮定し、8~20個のシリコン原子の配置の候補を進化的アルゴリズムで生成するとともに、より安定または未探索の構造をガウス過程回帰で予測することによって、効率的にシリセンの安定構造を探索した。その結果、2√3×2√3、√13×√13、4×4単位胞に対しては実験的に既に確立した安定構造の再現に成功するとともに、実験的に観測困難と思われる準安定構造が多数存在することを発見した。特に√13×√13単位胞に対して得られた準安定構造には2019年に原子間力顕微鏡で同定された構造も含まれており、GOFEEが二次元物質の構造探索に有効であることを確認することができた。さらに√7×√7、3×3、√19×√19、√21×√21単位胞に対しても安定構造としてハニカム格子が得られたが、わずかに報告例がある√7×√7単位胞の場合を除いてこれらは実験的にほぼ観測されていない。各単位胞におけるシリセンの相対的安定性を比較するために、系の自由エネルギーをシリコン原子の化学ポテンシャルの関数としてプロットした。その結果、化学ポテンシャルの各領域で2√3×2√3、√13×√13、4×4相のいずれかが安定になるだけでなく、√7×√7相が準安定構造として√13×√13、4×4相にエネルギー的に近くなる領域が存在することが判明し、これらの振る舞いは実験事実とよく一致している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2021年度に予定していた銀(111)表面上におけるシリセンの安定構造の探索を√7×√7、3×3、2√3×2√3、√13×√13、4×4、√19×√19、√21×√21単位胞に対して各50回実行し、それぞれ最安定と準安定なハニカム格子構造を決定することができた。異なる単位胞とシリコン原子数では探索空間のサイズが異なるため確実に構造探索が実行できる保証はないが、探索空間を適切に調整することにより安定的に構造探索を実行できた。単位胞のサイズとシリコン原子数は計算機資源が許す限り増やすことは可能であるが、既に得られた構造には実験的に未観測のものが多数含まれており、それらの構造を詳細に解析することで論文にまとめることができると考えられる。銀(111)表面上のシリセンの構造探索と並行して、研究室の大学院生との共同研究でグラフェンナノリボンの端に担持した白金単原子触媒の構造や酸化物表面上におけるパラジウムクラスターの構造探索も行っており、これらも論文にまとめられるだけの十分な結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
銀(111)表面上におけるシリセンの各相の安定構造は決定できたので、今後はより詳細な解析を行う。まず実際の実験条件ではシリコン原子の過不足が考えられるの、そのような状況でも構造探索を行い、格子欠陥がハニカム格子に及ぼす影響を調べる。次に実験的には√13×√13相と4×4相がしばしば共存して観測されているので、相境界を構成するシリコンの原子数を変化させながら構造探索を行い、相境界の構造を決定する。さらに実験的に未解明の構造に対して探索結果と原子間力顕微鏡(AFM)の不鮮明な画像を直接対応付けることは困難なので、AFMシミュレーションを実行して探索結果から予測されるAFM像を生成し、実験結果のうち未決定の構造を解明する。 当初の予定では2022年に金属表面上におけるボロフェン、2023年に自立型ボロファンの構造探索をする予定であったが、後者のボロファンは水素貯蔵材料として近年特に注目が集まっており、また身近にボロファンの実験家がいて情報が得やすいため、2022年はボロファンの構造探索を進める予定である。実験的にはボロファンを構成するホウ素と水素の二体分布関数の観測結果から、ボロファンの安定構造は過去の計算結果とわずかに異なることが分かっているので、GOFEEで安定構造を探索すると同時に二体分布関数を計算し実験結果と比較することで、効率的にボロファンの構造探索を実行する。
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