研究課題
自由電子レーザー（FEL）の利用により，短波長高強度レーザー場と原子・分子との相互作用による非線形光学現象についての実験研究が大きく進展している。その主要な過程は摂動的な多段階の光子吸収による多重イオン化であることが分かってきている。その多重イオン化メカニズムの詳細な理解を進めるためには，フェムト秒のFELパルス中の各光吸収経路で生成している電子状態についての情報が鍵となる。本研究では，これまでに開発を進めてきた電子・イオン同時計測法に基づき，個々の光吸収経路を高度に識別して，そこに関与している電子状態を直接的に観測することを目指した。 最終年度も引き続き理研のFEL施設SACLAの軟X線ビームラインBL1を利用し，磁気ボトル型電子分析器を用いた電子・イオン同時計測実験を実施した。昨年度行ったヨウ化メチルの内殻イオン化によるプローブ実験によって、レーザー光による光解離過程を電子・イオン同時計測法によって追跡するできることが示された。この手法をヨードチオフェンの結合開裂過程に拡張することを今年度試みた。具体的には、ヨードチオフェンの結合開裂によって生じることが期待されるI4d内殻光電子やS2p内殻光電子の化学シフトを調査した。また、ヨードチオフェンの内殻イオン化による化学シフトやオージェ崩壊により生成するイオン種の情報が不足しているため、その参考情報を得るために分子科学研究所の放射光施設を利用した多電子・イオン同時計測実験も行った。それらの測定データから結合開裂についての知見を引き出せるか、得られてているデータの解釈について現在議論中である。
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The Journal of Chemical Physics
巻: 160 ページ: 024304
10.1063/5.0186619
巻: 158 ページ: 214306
10.1063/5.0156138
