研究課題
金属的表面状態を持つトポロジカル絶縁体では、一軸応力印加で結晶の格子が歪みを与えると、その電子状態が変化することが予測される。この研究では、この電子状態の変化、特に、トポロジカル相転移近傍の電子状態を角度分解光電子分光(ARPES)法で観測することで、新しい知見を得ることを目指した。また、放射光ARPES装置で広く共同研究ユーザーが利用できる、一軸歪印加試料ホルダを開発し、歪印可ARPES実験できる環境を整備することを目的としている。2023年度は、一軸歪印可試料ホルダの熱伝導性向上などの改良を行い、1T-TaS2の再測定を行った。抵抗率測定とARPES測定で伸張方向の歪に対し低温側への転移温度のシフトが見られた。この転移点のシフトは、格子の歪によりCDWの抑制が起こっていると考えられる。また、トポロジカル絶縁体Bi2Se3の歪印可測定を行い、歪誘起によるトポロジカル表面電子状態の変化が観測できた。期間を通して、ARPES用の電極付き試料マニピュレータの整備と電極付き試料ホルダの開発を行った。ホルダ上で1T-TaS2の4端子電気抵抗率測定を実施したところ正しく測定ができ、これらが正しく作動することが分かった。ピエゾ素子による一軸歪印可ホルダの開発も進め、電極ホルダ上で加圧動作することを確認した。このように放射光高分解能ARPES装置において、共同研究ユーザーが広く使用できる、数種類の一軸応力印可ホルダを開発、また電極マニピュレータと電極ホルダを開発し、様々な外場印可ARPES測定が可能な環境を整備することができた。Pb1-xSnxTeの試料は、硬く脆い試料であったため、歪印可ARPES測定では議論しうる結果を得ることが困難であったが、柔らかい層状物質の1T-TaS2やBi2Se3では、歪印可によるCDW相転移点やトポロジカル表面電子状態の変化を得ることができた。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (17件) (うち招待講演 1件)
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