研究課題
タリウム系トポロジカル絶縁体の薄膜をスパッタリング法で作製するため、それまでは所有する装置で二元同時スパッタが可能であったところにもう1台電源を導入し、三元同時スパッタが可能になるよう装置を改造した。二元スパッタにおいては PC から出力するアナログ電圧によってスパッタの電力を制御していたが、3台目の電源についてもそうした回路を組み上げた。タリウム系薄膜成長を本格化させるにあたり、ターボ分子ポンプに毒性のあるタリウムが付着するとメンテナンスが困難になる恐れがあることから、チャンバーの真空排気にはターボ分子ポンプを使うものの、スパッタ成長時の真空排気には油拡散ポンプを使用するシステムを新たに組み上げた。それまでの真空配管はスパッタ時にターボ分子ポンプで細い配管から真空排気するものであり、分岐配管により元の真空排気も可能になるよう考えて油拡散ポンプを接続したところ、排気能力が足りないことが判明した。よって分岐をあきらめ、スパッタ時には油拡散ポンプのみを使用するよう専用配管を組むことでこれを解決し、安定した膜成長ができるようになった。30 nm 程度を超える膜圧にすると膜の品質が低下し、解決できなかったため、最初の 10 nm 程度の成膜とその後の成膜とで条件を変える2ステップ方式での成膜条件を新たに探った。その最初の成膜時の二元スパッタの条件と、2ステップ目の条件を変えるとうまくいく傾向が明らかになったことから、膜が付着し始める際に組成がずれる可能性が高いと考えられる。
2: おおむね順調に進展している
申請時に判明していなかったポンプのメンテナンスの問題が生じたが、それは順調に解決した。また、2ステップ法が有効であることも現在までに新たに判明したことであり、そのことにより膜の質を改善することができた。研究を発展させる上での土台を固めたところであり、ここを確立しないで研究を進めるのは効果的でなかったと考えられることから、本研究課題は順調に進行していると考えられる。
2ステップ法が有効と判明したことで、薄膜の質という点では当初より改善が見込まれる。2年目中に成長条件を見極め、大まかには3種類あるタリウム系トポロジカル絶縁体の次の系の成長条件確立に進みたい。
この残額1,007円と同じか、これを下回る額で研究に必要となる物品購入の必要が当該年度内に生じなかったため。この残額は次年度にて適切に使用する予定である。
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Communications Physics
巻: 4 ページ: 170(1)-170(4)
10.1038/s42005-021-0067