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2022 年度 実施状況報告書

高密度水素・水素化合物における非調和格子振動の解析手法開発と構造探索への応用

研究課題

研究課題/領域番号 21K03437
研究機関東北大学

研究代表者

阿部 和多加  東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (00361197)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード水素・水素化合物 / 非調和格子振動 / 高圧 / 第一原理計算
研究実績の概要

高密度水素の構造は、数百ギガパスカル領域においては、これまでも理論から詳しく調べられている。その結果によると、たとえ原子相であっても、固体水素の構造はそれほど単純ではないと考えられている。一方、陽子の零点エネルギー(ZPE)を適切に考慮すれば、単純で等方的な構造が安定化されるとの意見も古くからある。ただいずれにせよ、圧力がさらに増せば、いつかはfcc、hcp、bcc構造のような単純で等方的な構造が現れるはずだ。そのような等方的構造への転移圧を予測するとき、ZPEの非調和性がどのような効果をもつかは、あまりよく調べられていない。このような動機付けから本年度は、self-consistent harmonic 近似(SCHA)を用いることにより、テラパスカル領域における固体水素の構造を、ZPEの非調和効果も含めて調べた。SCHA計算には有効原子間ポテンシャルを用いるが、ここでは原子間ポテンシャルは二体ポテンシャルの和でかけるものと仮定し、第一原理計算の結果を再現するように作成されている。結果、固体水素は約3.9TPa付近で等方的な構造へ転移するとの予測が得られた。またそこでは、5つの等方的構造が、非常に近いエンタルピー(一原子当り0.01eV以内の差)で競合していることも分かった。非調和性を考慮しない場合、等方的構造への転移は2.3TPaという比較的低い圧力で起きる。また、4TPa以上ではfcc構造が特に低いエンタルピーをもち、多数の構造が競合するという状況も起きない。すなわち本研究結果は、ZPEの非調和性がテラパスカル領域の水素の相図に大きな影響を与えること示しており、調和近似を超えた零点エネルギーの扱いが不可欠であることを示唆している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

Stochastic SCHA (S-SCHA) のコード開発において、並列化およびセルを含む構造緩和がまだ実用化できていない。また、S-SCHA用の高精度で実用的な有効三体原子間ポテンシャルの作成手法が十分に確立できていない。

今後の研究の推進方策

テラパスカル領域の水素の構造は、本年度通常のSCHAで既に詳しく調べており、二体ポテンシャルで比較的よく原子間相互作用を記述できることも確認している。そこでまず並列計算および構造緩和の機能をS-SCHAコードに導入したのち、テラパスカル領域の水素に適用する。非調和ZPEの効果を含めた構造緩和が、超高圧領域における水素の相図にどのような影響を与えるかを解析する。一方、水素の圧力誘起分子解離が起きると予想されるような、テラパスカル領域よりもやや低い圧力の範囲(500GPa付近)では、三体ポテンシャルの影響が重要になってくる。水素の分子解離をひとつの題材としながら、できるだけ実用的な有効三体ポテンシャルの作成手法を確立する。その後、三体ポテンシャルおよび構造緩和を含むS-SCHAを高圧水素化合物に適用する。

次年度使用額が生じた理由

学会参加の出張旅費としての使用を予定していたが、学会がオンラインでの開催になったため、次年度使用額が生じた。次年度使用額も合わせた翌年度分については、ワークステーションの購入と学会参加旅費への使用を計画している。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2023

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] テラパスカル圧力領域における水素の構造に対する非調和零点エネルギーの効果2023

    • 著者名/発表者名
      阿部和多加
    • 学会等名
      日本物理学会2023年春季大会

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公開日: 2023-12-25  

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