研究課題/領域番号 |
21K03439
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
深澤 英人 千葉大学, 大学院理学研究院, 准教授 (90361443)
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研究分担者 |
大濱 哲夫 千葉大学, 大学院理学研究院, 准教授 (80345008)
川股 隆行 東京電機大学, システム デザイン 工学部, 教授 (00431601)
杉本 高大 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (70756072)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 擬ギャップ / 高温超伝導 / 核磁気共鳴 |
研究実績の概要 |
銅酸化物高温超伝導体はその発見以来、母物質である反強磁性モット絶縁体にキャリアを注入することにより超伝導が発現すると考えられてきた。しかし、近年Nd2CuO4構造いわゆるT’構造をもつ電子ドープ型高温超伝導体において、過剰酸素を取除くことにより、電子をドープしなくても超伝導が発現する可能性が示された。しかし、一方で実験的に示されてきたこのノンドープ超伝導は、実は酸素がCuO2面から取り除かれ電子ドープが起こっており、その超伝導は従来通りのドープされたモット絶縁体としての高温超伝導であるとも、最近の研究では指摘されている。また、これまでにT'型の銅酸化物高温超伝導体においても擬ギャップ現象が本質的に存在することが明らかになってきており、この擬ギャップの起源を探ることが本研究課題の重要な目標である。さらに、擬ギャップ現象と関連して強相関電子系における量子臨界現象と磁性について研究することも重要であり、本年度も周辺物質に関しても研究を行なった。 銅酸化物に関しては、T’-Pr1.3-xLa0.7CexCuO4について、アニールの仕方を変えた試料に注目し、系統的に63,65Cu核、139La核のNMR測定を行ない、超伝導対称性および反強磁性ゆらぎの有無・強さを明らかにした。結果として、アニールの効果が、Ceの置換量に依存することが明確になった。具体的には、Ce量が増えるほど、アニールにより除去される酸素量が増えることがわかった。 さらに、単体金属であるalpha-Mnの圧力誘起磁気秩序相におけるゼロ磁場NMRについて、この物質の量子臨界点(約4.5 GPa)が厳密には一次相転移であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究が当初の最終年度を越したのは遅れたと言わざるを得ない。本研究課題で目標とする電子ドープ型銅酸化物高温超伝導体の本質的な基底状態を明らかにするための試料作製に若干遅れが生じたためである。その中でも、PLCCOのアニール効果にやalpha-Mnの圧力誘起磁気秩序相の消失点について明らかにすることができたことは、充分な成果であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
T'-La1.8-xEu0.2(Sr,Ca)0.2CuO4の試料を受け取り次第、すぐにでもNMR測定を開始できる。これについて確実に行ない、考察を行なう。 重い電子系超伝導体Ce3PtIn111については、希釈冷凍機温度において超伝導状態の研究を引き続き目指す。 単体金属alpha-Mnについては、常圧でのスペクトルの温度変化から詳細な磁気構造の解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究において重要な位置を占める電子ドープ型銅酸化物高温超伝導体の試料については、試料作製の特殊性がある。その上、近年原料となる試薬に変化が生じ、従来の作製方法では純良な試料が得られない状況が続いた。その中でも、還元の度合いについてNMRを用いて明らかにした論文や、alpha-Mnの高圧磁気相でのゼロ磁場NMRの論文などを公表できたが、本丸である試料に関しては、充分な進展とはいかなかったため、利用予定だった寒剤費用を使い切ることが出来なかった。昨年度末に新規試料の作製めどがたったとのことなので、次年度において、必要な測定を進める予定である。
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