研究実績の概要 |
今年度は、昨年度に引き続き,インジウム自己フラックス法を用いて作成した単結晶試料Ce1-xNdxCoIn5 (x = 0, 0.05, 0.1, 0.15, 0.2, 0.3) を用いて,キャパシタンス式ファラデー法による極低温DC磁化測定とキャパシタンス法による熱膨張・磁歪測定を行った。測定条件は,温度範囲が0.3Kから5Kまで、磁場範囲が0Tから5.5Tまでであり,磁場はc軸に平行に印加して実験を行った。
Nd置換系の試料では,いずれの熱膨張・磁歪の結果でも超伝導転移による異常が観測され,さらにもう一つの明瞭な異常が観測された。先行研究との比較から,後者の異常はSDW転移によるものであると考えている。一方,DC磁化については,Nd濃度10%の試料のみ測定を行い,超伝導転移による異常のみが確認できた。これらの実験結果にもとづき,温度-磁場-Nd濃度の三次元相図を作成した。その結果,Nd濃度が増加すると超伝導相は抑制される一方,Nd濃度5%以上ではSDW秩序が現れることが明らかになった。今回のゼロ磁場での結果は,2008年にHuらによって報告された先行研究の結果と定性的には一致しているが,定量的には超伝導転移温度のNd依存性が今回の結果の方が大きくなっていることがわかった。この違いについては,われわれが作成した単結晶試料のNd濃度が実際は低くずれている可能性もあるため,今後,以前行った化学組成分析結果を再検討する必要である。また,Nd置換による超伝導転移の抑制については,単純な化学的圧力効果では説明できないため,SDW秩序の出現によって超伝導転移は抑制されていることが示唆される。
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