研究実績の概要 |
1.全電子フルポテンシャル線形化補強平面波法(film-FLAPW法)のプログラム開発を行った。前年度は、スピンホール伝導度や角度依存X線磁気円二色性(XMCD)、NEB法の第一原理計算プログラムを完成させ、本年度は引き続き軌道ホール伝導度の第一原理計算プログラムを第二変分法及び線形応答理論に基づき開発した。
2.3d強磁性金属Coと5d重金属(Ta,W,Re,Os,Ir,Pt)の2層薄膜に対して、前年度に引き続き内因性のスピンホール伝導度と異常ホール伝導度の5d重金属種依存性と膜厚依存性を解析した。ベリー曲率及びスピンベリー曲率の計算から、両物性は5d重金属層の電子占有数により系統的に説明できること、しかし両物性の発生機構が異なることがわかった。スピンホール伝導度は5d重金属層内のバルクバンドに由来し、異常ホール伝導度はCo界面の磁気的近接効果により説明可能で、これらの予測はスピンデバイス材料開発に向けて一つの設計指針を供すると考えられる。
3.人工多層薄膜の材料設計に向けて、第一原理計算の限られた少数データから原子層配列と物性との関係を探索する材料設計手法を開発した。ガウスデータ拡張法とアンサンブル学習を取り入れたニューラルネットワークを実装し、例えば、前年度までに計算してきたMgO上のCoFe多層膜に対して、磁気モーメントと形成エネルギーが全原子層配列数の10~ 30%からなるトレーニングデータセットからほぼ予測することができること、この改善はニューラルネットワークにおける近似曲線の平滑化効果に起因するものであることがわかった。この手法はマテリアルズインフォマティクスに広く適用できるものと考えられる。
|