研究課題
Te正方格子から構成される電気伝導層とCeTeから構成される磁性層が積層したCeTe2は電荷密度波状態によりエネルギーギャップが形成された低キャリア密度の磁性半導体であり、磁性に強く影響された電気伝導現象が観測される。また、Sb正方格子を持つCeSbTeは、結晶構造の対称性から多重のバンド縮退点を持つ特殊な電子構造が理論的に期待されている。本研究では、Teの一部をSbで置換することによりキャリア密度を非常に低く抑えた磁性半導体を実現し、低温磁気秩序状態において0.4テスラの低い磁場で4桁近く電気抵抗率が減少する巨大応答現象を新たに発見した。この巨大磁気抵抗効果はc軸方向の強制強磁性状態への転移に伴ったものであり、広い温度範囲においてc軸方向の磁化の値と電気抵抗率との間に明瞭な関係性があることを明らかにした。一方でc軸と垂直方向の磁場中では電気抵抗率はほぼ変化せず、電気抵抗率は磁場方向に依存して4桁近い大きな異方性を示すことを実証した。さらに、キャリア密度を広い範囲で変化させたCeTe2単結晶や、Ceの他にも新たに5種類の希土類元素を含んだ磁性半導体単結晶の合成にも成功した。これらについても磁気秩序状態において異方性の大きい磁気抵抗効果を観測した。また、擬1次元的な骨格を持つ磁性半導体の単結晶の合成にも成功した。このように、本研究により発見された少数キャリア密度磁性半導体で実現する新たな磁気抵抗効果の起源について明らかにしていくために必要な比較物質の合成方法も確立した。
1: 当初の計画以上に進展している
超低キャリア密度CeTe2で実現する異方性の大きい巨大磁気抵抗効果と磁化との関係について実験的に明らかにすることができた。その起源についてはまだ解明できていないが、比較対象となる5種類の希土類元素化合物単結晶の合成やキャリア密度制御にも成功している。
超低キャリア密度磁性半導体CeTe2とキャリア密度を数桁大きくした試料について、磁気抵抗効果とその異方性を比較することにより、この磁気抵抗効果の起源が電荷密度波状態によるものか磁気ポーラロンによるものかを明らかにする。さらに、Ceの他にも様々な希土類元素で同様な構造の磁性半導体単結晶を合成し、磁気抵抗効果と磁化との関係について詳細に調べていく。これらを比較することにより少数キャリア密度磁性半導体の磁気抵抗効果の起源の解明に取り組んでいく。
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AIP Advances
巻: 11 ページ: 125216
10.1063/5.0072766