量子臨界点は絶対零度における2次相転移点であり,非従来型超伝導の出現など興味深い現象が起こる舞台として広く研究されている。一般に圧力などのパラメータで相転移点を下降させることが出来れば,量子臨界点を誘起させることが出来る。しかし,秩序相が強磁性である多くの場合,いわゆる強磁性量子臨界点はゼロ磁場では実現しないと考えられてきた。 しかし、CeRh6Ge4がゼロ磁場で量子臨界点を示す稀有な物質として存在する。本研究課題でCeZnは強磁性量子臨界点近傍で別の反強磁性的な相に移り変わることが明らかとなった。これらの結果から強磁性量子臨界点近傍の振舞は物質の個性を反映して多彩な現象を示す一面があることが伺える。 本課題では強磁性量子臨界点近傍の多様な振舞いを調査するために、フェリ磁性体Ce5Ru3Ga2、強磁性体UTeAsの圧力下実験を行った。Ce5Ru3Ga2に関しては圧力下において約0.4 GPaで磁気転移が消失することと共に、この構造相転移も抑制され、複雑な温度-圧力相図を示すことが明らかになった。UTeAsは超伝導体UTe2の類似物質として研究されているが、正方晶構造を取り、約60 Kにおいて強磁性転移を示す。加圧実験を行った結果、転移温度の減少は緩やかであり、約4 GPaにおいて50 K程度まで減少することが分かり、量臨界点の誘起にはさらなる圧力が必要であることが明らかになった。 強磁性転移を示す新規物質を探索することを目的に新しい磁性体の開発を行った。その結果、NbMnP、NbMnGeの単結晶作製に成功し、それらが弱強磁性(主体としては反強磁性)を示すことを明らかにした。NbMnPに関しては中性子散乱を通して明らかになった磁気構造から反強磁性由来の異常ホール効果の発現が予想され、実際に大きな異常ホール効果が発現することを明らかにした。
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