研究課題/領域番号 |
21K03448
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
野原 実 広島大学, 先進理工系科学研究科(先), 教授 (70272531)
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研究分担者 |
菅原 仁 神戸大学, 理学研究科, 教授 (60264587)
播磨 尚朝 神戸大学, 理学研究科, 教授 (50211496)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | j=3/2フェルミオン / フェルミ面 / スピン軌道相互作用 / 量子振動 / 軌道交差 |
研究実績の概要 |
本研究は、伝導する j = 3/2 フェルミオンの特徴が、結晶空間反転対称性の破れに起因したフェルミ面のスピン分裂に現れることを、ドハース・ファンアルフェン効果(dHvA効果)およびシェブニコフ・ドハース効果(SdH効果)における「軌道交差」現象を用いて検証することを目的としている。第2年度は、前年度に引き続いてBiフラックス法によりYPtBi, LuPdBi, ScPdBiの単結晶を育成した。また関連物質であるLaPtSiおよびHo2Ir3Si5の結晶を育成した。これらの結晶について、エネルギー分散蛍光X線分析 (EDX) により化学組成の分析を、X線解析により結晶構造の解析を行なった。YPtBi, LuPdBi, ScPdBiについては、1.8 K, 9 Tまでの温度・磁場条件で電気抵抗率および磁気抵抗の測定を行なった。この条件でSdH効果による量子振動は現れなかったが、一方で低磁場領域において巨大な磁気抵抗効果を観測した。さらにScPdBiが転移温度1 Kで超伝導を示すことを見出した。この超伝導は、電流の大きさに敏感であった。Ho2Ir3Si5では、電荷密度波転移が巨大なヒステリシスを示すことを見出した。LaPtSiでは、単結晶構造解析によりPtとSiの混合があることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
YPtBi, LuPdBi, ScPdBi の単結晶資料が得られており、YPtBi および LuPdBi については蛍光X線による化学組成分析とX線回折実験による同定が完了している。YPtBiにおいてはSdH効果による量子振動が観測できた。しかし、軌道交差の解析に必要な精度のデータが得られていないという点が遅れている。一方で、ScPdBiの超伝導を観測し、比熱測定などが進んでいる。また関連物質 Ho2Ir3Si5とLaPtSi の研究が進展している。特にLaPtSiにおいては、PtとSiにおいてサイト間での部分的な置換が存在することを単結晶X線回折から明らかにした。以上のように、遅れている部分もあるが、予期しない進展もあった。
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今後の研究の推進方策 |
(a)ハーフホイスラー合金の高品質単結晶育成の項目においては、引き続き、結晶の純良化を進める。特に、Bi/Pbフラックスの濃度と育成温度を変化させた実験を進め、量子振動の実験に適した結晶の育成を目指す。 (b)シュブニコフ・ドハー ス (SdH) 効果の量子振動実験の項目においては、純良化された単結晶資料における測定を実施する。特に3He 冷凍機と14 T超伝導マグネットによる低温・強磁場実験を行い、量子振動の角度依存性のデータ取得まで進める。 (c)j=3/2のトポロジカル半金属に <111> 方向の歪を加えると、ガンマ点で接していた価電子帯と伝導帯の間にギャップが開くことが予想されている。大型結晶が得られた場合には、<111> 方向に伝播する縦波超音波の実験を行い、ギャップが開くことに伴う弾性率の異常を検出する。 (d)関連物質LaPtSi単結晶の特性を調べる。特にX線構造解析、電気抵抗率と磁化測定を行い、超伝導などの特徴的な物性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で、当初計画していた実験、研究打合せ、成果発表のための国内旅費を執行できなかった。次年度使用額については、実験、研究打合せ、成果発 表のための追加の国内旅費、および液体ヘリウム代などの追加の消耗品費として有効に活用する。
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