本研究では「遍歴電子または局在と遍歴の中間に位置するような電子に対して,幾何学的フラストレーションはどのような影響を与えるのか」という学術的問いに答える事を最終目標とし,Ce5Si3とCe5Ga2Geの微視的実験を実施した.実験の結果,これらの物質の4f電子の一部は近藤効果によって遍歴的性質を持ち,それが0.5meVのスピンギャップと分散関係を示す未知の基底状態を形成している事が明らかになった.この結果は近藤効果によって遍歴的な性質を持ち始めた4f電子がフラストレーションによりスピン一重項でも近藤一重項でもない未知の非磁性基底状態にクロスオーバーしていく姿を初めて示したと言えるかもしれない.
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