研究課題/領域番号 |
21K03460
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
村川 智 東京大学, 低温科学研究センター, 准教授 (90432004)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 量子流体 / 超流動ヘリウム3 / トポロジカル物質 / マヨナラ状態 / 表面物性 |
研究実績の概要 |
本研究は1mK程度という超低温で実現する超流動ヘリウム3の表面状態の性質を明らかにすることを目的としている。その目的のため、今年度は、測定を開始するための準備として測定セルの作成、および冷凍機の試運転を行った。 測定セルは設計および必要なパーツの収集も完了し、数mKの超低温でヘリウムの実験を行う際に必要な熱交換器の作成をした。熱交換器の作成の際、材料として過去に使用されていた銀粉が生産中止のため、代替品で行うことになり、過去の文献の方法ではうまくいかなかったため、作成する条件出しから行った結果、満足いくものを作成することができた。その他のパーツに関しては、問題なく稼働できることが確認できた。 冷凍機に関しては、1mK程度という超低温を作成するためには希釈冷凍機を用いた核断熱消磁冷凍機が必要である。本研究では本学理学系研究科に設置されていたものを移設して使用する。本年度は移設後の試運転を行った。その際に多くの不具合が発覚し、その修繕を行っている。修繕の結果、希釈冷凍機の運転には目途がたった。 また、本研究では準粒子を小さなピンホールから射出するが、その粒子ビームは直進するものばかりではないため、補正が必要である。そのために、モンテカルロ法により、古典的な計算で、準粒子の軌道を計算し、ビームの広がり具合の見積もりを行った。この計算結果をもとに実際の測定結果に補正をかけ、実際の反射率を求める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では希釈冷凍機を用いて核断熱消磁冷凍を行うことで超低温環境を作り出し、超流動ヘリウム3を実現させることが必要であるが、その希釈冷凍機に不具合が発生し、デュワーの入れ替えから、その修繕を行う必要が生じてしまい、計画の進捗がやや遅れてしまっている。 また、測定セルの熱交換器部分においても原材料である銀粉が従来のものが生産停止になってしまっており、代替品で製作を行っていたが、その際に最適な条件が異なり、その試行錯誤に時間を要してしまった。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度において希釈冷凍機の修繕の目途はたち、測定セルも最後の組み立てを残すのみとなったため、今年度は昨年度作成した測定セルを冷凍機に搭載し、実際の測定に入る。 まず、核断熱消磁冷凍のテストを行い、十分試料を冷却できることを確認したのちに、測定セルにヘリウム3を導入し、測定を行う。最初は、角度固定の状態で先行実験を再現し、量子アンドレーエフ反射を観測し、その解析方法について検討を行う。 一つの角度で、解析方法が確立したのち、様々な入射角によって測定を行い、量子アンドレーエフ反射率の角度依存性を測定する。
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備考 |
低温科学研究センター年報に解説記事 「超流動ヘリウム3の表面状態」
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