本研究は1mK程度という超低温で実現する超流動ヘリウム3の表面状態の性質を明らかにすることを目的としている。その目的のため、測定セルの作成、および核断熱消磁冷凍機の修繕を行い、実験を行った。 1mK程度という超低温を作成するためには希釈冷凍機を用いた核断熱消磁冷凍機が必要である。本研究では本学理学系研究科に設置されていたものを移設して使用する。移設より多くの不具合が発覚していたが、大きな問題であった低温リークの対処法が確立し、希釈冷凍機の運転および核断熱冷凍を行ったところ、ここでも希釈冷凍機の混合ガスの循環の際の遅い液化や核ステージへの大きな熱流入、各種温度計の不具合といった問題が生じたが、これへの対処を行ったところ、核断熱消磁冷凍機として十分な能力を発揮できることになった。 測定セルはピンホールが開いている黒体輻射体を回転させる機構を持ち、それにより表面に様々な角度で準粒子を打ち込む構造になっている。その回転の機構は、内部の流体の圧力により伸び縮みするベローズを用いて、室温からの低温でも固化しないヘリウム4ガスを注入することによりセルの内部に直線運動を導入する。この運動を各種歯車を用いて回転運動に変換する。このセルを核断熱消磁冷凍機に搭載し、100mK以下の極低温度で動作させたところ、発熱などの問題はなく想定通り動作した。また、測定セル内の液体ヘリウムは黒体輻射体の内外ともに0.3mK程度の超低温まで冷却でき、ヒーターを作動させることで内外の温度差を生じさせ、準粒子を発射させることができた。
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