研究課題/領域番号 |
21K03461
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
田久保 耕 東京工業大学, 理学院, 特任助教 (30738365)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 光誘起相転移ダイナミクス / 電子線回折 / 共鳴軟X線散乱 / スピンダイナミクス / 強相関電子系 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、時間分解型のパルス電子線回折および放射光X線を用いた共鳴軟X線散乱測定という世界的にも最先端の手法を用いることで、強相関電子系物質の結晶構造やスピン状態の超高速ダイナミクスを研究することである。特にフェムト秒領域の超短パルスレーザー照射下でこれらの物質の示す光誘起相転移に伴う構造と反強磁性状態変化に着目した研究を行う。本年度は主として研究のベースの実験手法となるフェムト秒領域の時間分解型電子線回折測定装置の開発を大学の実験室内で行った。フェムト秒領域の時間分解能を持つテーブルトップのパルス電子線回折測定装置を構築した。 パルス電子線の加速電圧は100keVに設定し、1kHzの超短パルスレーザーと同期した約3GHzのRF電場による電子線パルス幅圧縮という技術を用いて、ポンププローブ法によるフェムト秒領域の時間分解測定を実現した。シリコン薄膜の電子線回折測定を行い、シリコンの光誘起の構造変化の初期過程およびその時間分解能が約75フェムト秒以下と100フェムト秒以下であることを明らかにした。この100フェムト秒以下の時間分解能は、試料ダメージの少ない100keV領域の電子線回折実験としては世界初のものであり、今後、強相関電子系物質の光誘起の超高速の構造・スピンダイナミクスの研究に大きな貢献が期待できる装置となった。またスピン偏極率80%を超えるパルス電子源の導入も行い、十分な電子線量が出ていることも確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、実験室での電子線回折装置および国内外の放射光光源を用いた測定を組み合わせることで、強相関電子系物質の構造およびスピンの超高速ダイナミクスを研究することを目的としている。実験室での電子線回折装置の開発は非常に順調に進み、シリコンの光誘起測定により時間分解能が100フェムト秒以下であることが確認された。またスピン偏極した電子源の導入も成功した。概要にも記入したように、今後、強相関物質における光誘起の構造・スピンダイナミクスの研究に大きな貢献が期待できる装置となった。 一方で、コロナ禍における出張制限の影響で、放射光光源などの学外施設を用いた実験研究は困難になっている。今年度は出張を伴う測定を年に複数回行い、構造および反強磁性のダイナミクスを研究することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
出張制限が不定期に起こる現在の状況では、当初の研究計画のように国内外の放射光光源のビームタイムを安定して確保することは難しくなっている。計画のように、国内外の放射光やXFEL施設を用いた測定を年に複数回行う形で、一連の光誘起の構造・スピンダイナミクスの全体像を確立していくのは非常に困難である。フェムト秒領域の電子線回折装置の開発は順調である為、大学の実験室内のレーザー光源・装置を用いて、多くの物質の測定を数多く行うことで、光誘起ダイナミクスを考察することを重視する形で研究を行っていく方針である。今後は実際に多くの強相関物質の測定を行い、状況に応じて実行可能な研究をその都度見定めて、さらに研究を推進していく計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由であるが、現在までの進捗状況などにも記入したように、今年度はコロナ禍の影響で出張制限が不定期に起こる状況にあり、当初計画していたように国内外の放射光光源やXFELのビームタイムを安定して確保して、実際に出張し実験を行うことが困難であった。また、成果を発表する場である国際会議などへの参加も難しくなっている。今後は、光学測定など、大学の実験室内で行える他の多くの実験手法を組み合わせる形で強相関物質の光誘起ダイナミクスを総合的に研究していきたいと考えている。その為に必要な装置を補充し、早急に成果を発表していく計画である。
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