研究課題/領域番号 |
21K03470
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
菅原 仁 神戸大学, 理学研究科, 教授 (60264587)
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研究分担者 |
上床 美也 東京大学, 物性研究所, 教授 (40213524)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 超高圧実験 / 量子臨界点 / 量子振動効果 / ドハース・ファンアルフェン効果 / シュブニコフ・ドハース効果 / フェルミ面 |
研究実績の概要 |
本研究では、多極子秩序を示すPrTi2Al20やヘリカル磁性を示すMnPなどの、特異な超伝導や金属状態を示す量子臨界圧力近傍での電子状態を明らかにすることを目的としている。そのために、これまで実験が困難なために行われてこなかった10 GPa級超高圧下でのドハース・ファンアルフェン(dHvA)効果やシュブニコフ・ドハース(SdH)効果などの量子振動効果測定を可能にし、これらの物質の量子臨界点近傍でのフェルミ面やサイクロトロン有効質量を観測することにより、その電子状態の特徴を実験的に捉え、多極子相互作用や磁気相互作用との相関を明らかにすることを目指している。さらにこの研究により多極子揺らぎを媒介とした新しい超伝導物質探索などの展開を期待している。 本年度は、各種圧力セルに最適な検知コイルや変調磁場コイルの設計作製などの装置開発を行いながら、研究対象となる物質の純良結晶育成や新物質探索を行った。具体的には、装置開発では静水圧下での量子振動効果測定装置として6-8型アンビルセル用の検知コイルおよび変調磁場コイルの設計試作を行った。試料作製に関しては、価数揺動物質であり超伝導を示すCeIr2の類縁物質として知られる強磁性体PrIr2の純良単結晶化に成功し、常圧下でdHvA振動を初めて観測することに成功した。また、高圧下で量子臨界点を持つ候補物質を多く合成し、電気抵抗、磁化、比熱測定などからその基本物性を調べた。また、関連した研究成果について強相関電子系の国際会議(SCES)で6件、日本物理学会などの国内学会等で13件の研究発表を行い、英文学術誌に3報発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高圧下量子振動測定装置の開発については、各種圧力セルに最適な検知コイルや変調磁場コイルの検討を行い、6-8型アンビルセルを用い20GPa, 30 mK, 9 Tまでの dHvA, SdH効果測定が設計可能であることを確認し、現在、コイルの試作が進められている。一方、純良結晶育成については、 Prを含む強磁性体PrIr2の純良単結晶化に成功し、高圧下での電気抵抗測定や常圧での dHvA効果測定が進められている。また、新物質探索に関してはCePt3P, CePtAl2、Ce2Au3Sn6、Ce4Pt9Al13、CeAgMg, Ce2Ir3Sb4、CeMgZn2などの多くの新物質の合成に成功し、電気抵抗、磁化、比熱などの基礎物性について調べた。
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今後の研究の推進方策 |
6-8型アンビルセル用に試作した検知コイルを実際に用いて、PrTi2Al20やMnPの高圧下量子振動効果測定を試みる計画である。また、純良単結晶化に成功したPrIr2やCeIr2、良質な多結晶合成に成功したCePt3Pなどについても、超高圧下で量子臨界現象が期待できるため、測定を行う計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染対策のため、国内学会などが遠隔で行われることになったことや、液体ヘリウムなど寒剤使用量が予定していたより少なかったため、旅費や消耗品費の使用料が本年度は少なかった。繰り越した予算については次年度の予算と合わせて計画的に使用する予定である。
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