研究実績の概要 |
本研究の目的は,ZrSiS構造をもつトポロジカル半金属物質群を対象として,バンド交差点に対してフェルミ準位を制御した試料を作製し測定することにより,当該物質のディラック電子の伝導特性を明らかにすることである.初年度は,主にランタノイド元素を含む LaTeSb 系及び LaTeBi 系の試料作成を行い,主に,Teが多いLaTeSb系で発現する電荷密度波(CDW)の波数より,当初の目論見の通り,連続的なバンドフィリング制御が出来ることを明らかにした.この結果を踏まえて,今年度は,①ランタノイド元素を非磁性のLaからCe, Pr, Ndといった磁性元素に拡張する,② 電荷密度波が報告されていないZrSiS系との比較を行うため,ZrSnTe系のバンドフィリング制御手法の確立を目指す,を行った.この系は,ランタノイドと化学的性質が似ているとされるイットリウム(Y)を含んだ YSbTe系のYとSbを周期律表において,それぞれ,右と左に一つ移動した系に相当しているため,特にこれを選択している. ①については,Ln=Ce, Pr, Ndを用いて,LnTe_1+xSb(Bi)_1-x:-0.2≦x≦0.2の試料を作成し,作成全域で単結晶を得ることが出来た.Ln=Laにおいては,xを変化させていくと,CDWを伴った正四角格子から正四角格子に歪が生じた2層構造に変化することを見出していたが,それよりも原子半径の小さいこれらの元素では,CDWを伴った正四角格子相と2層構造相の間に,CDWのない正四格子相が現れること,また,原子半径が小さくなるにつれて,その領域が広がることを見出した. ②については,仕込み組成を変化させるに従って,電気抵抗の振る舞いが連続的に変化する試料は得られたが,CDW等の構造的な観点からの変化は見い出せず,また,格子定数の変化もLnTeSb系に比べると非常に小さいことが分かった.
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