研究実績の概要 |
本研究の目的は,ZrSiS構造をもつトポロジカル半金属物質群を対象として,バンド交差点に対してフェルミ準位を制御した試料を作製し測定することにより,(1)研究対象物質のディラック電子の伝導特性を明らかにする,(2)価数変化させた場合の,トポロジカル半金属相の周辺の電子相を明らかにすることで,相変化に伴う表面状態等のトポロジカル物性の変化を調べる舞台として(研究対象物質を)確立する,ことであった.研究対象物質は,磁性トポロジカル物質への展開を念頭において,ランタノイド元素(Ln)を含むLnSbTe系及びLaBiTe系,最も研究が進んでいるZrSiS系との関連を明らかにするためにZrSnTeを選択した.得られた成果は次のようなものである. ・LnSbTe系ではLn=Y, La-Hoの範囲で単結晶が得られ,LnBiTe系ではLn=La-Ndの範囲で単結晶試料が得られた. ・LnSbTe系では,Te-richの組成ではCDWが,Sb-richの組成では,本研究で見出された積層方向に二倍周期構造をもつ構造が安定化することが明らかになった. LnBiTe系では,Ln=Laにおいて,狭い組成域の試料において,250K付近で抵抗異常と超格子の発現も観測され,CDW相の存在を見出した ・ZrSnTe系のバンドフィリング制御を試みたが,非常に狭い範囲でしか単結晶が得られない事が分かった. 研究期間の中盤から液体ヘリウム代の高騰→液化機の故障による供給停止という事態が生じ,低温物性測定を遂行するために,X線用磁石と組み合わせた, GM冷凍機を用いた液体ヘリウム不要の低温測定装置の開発に踏み切った.開発には研究期間の半分弱を要し,対象物質の測定の完遂はならなかったが,最終的に,最低温度1.35K,最高磁場10T,のGM冷凍機による電気磁気抵抗測定装置の開発を完了した.
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