研究課題/領域番号 |
21K03473
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
高畠 敏郎 広島大学, 先進理工系科学研究科(先), 特任教授 (40171540)
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研究分担者 |
梅尾 和則 広島大学, 自然科学研究支援開発センター, 准教授 (10223596)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 強相関電子系 / 磁気フラストレーション / 低温高圧実験 / 量子臨界現象 / キタエフモデル / ハニカム格子 / 希土類化合物 |
研究実績の概要 |
Ceイオンがハニカム格子を組むCePt6Al3は重い電子的挙動を示すことを我々は先に見出した。本研究では,この系における磁気的フラストレーションの役割を明らかにするとともに,キタエフ近藤物質に期待されている非従来型の超伝導を探索することを目的とした。 単結晶CePt6Al3の磁化は,容易軸のc軸方向において,28Tでメタ磁性を示した。この磁場の値と磁化率が肩を示す温度17 Kの比は,従来の非磁性の重い電子系化合物群が示す値と一致する。キャリア密度を保ったままで乱れを導入するために,Ptを同族元素のPdで置換したCe(Pt1-xPdx)6Al3の試料を作製した。その際,循環ブロアーを更新したグローブボックスを用いた。固溶限x=0.33以下の組成の多結晶を用いた磁化率,電気抵抗率,および比熱の測定から,xが0.05以上で反強磁性磁気秩序が発生し, xの増加とともにスピン密度波状態から局在した4f電子の反強磁性秩序状態へと変化することを明らかにした。この磁気秩序の発達の原因は,RKKY相互作用の乱れによる磁気フラストレーションの緩和であると解釈した。その理由は,PtとPdの2倍の質量差はスピン・軌道相互作用を局所的に乱すが,この置換は格子体積をほとんど変えずキャリアをドープしないので,近藤効果の抑制は無視できる為である。 分担者の梅尾は,CePt6Al3単結晶のハニカム面内と垂直方向に一軸圧を印加して交流比熱を0.4 Kまで測定したが, 0.25GPaまででは磁気転移は観測されなかった。研究協力者の北川はCePt6Al3多結晶のAl核の核磁気共鳴実験を行い,重い電子系に特徴的なスピン緩和率の温度依存性を見出し,Pd置換系にも着手した。研究協力者のD.T. AdrojaはPd置換系のミュエスアール測定で磁気秩序の発達を確認したが,中性子回折予備実験では磁気回折ピークを検出できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハニカム近藤格子の置換系Ce(Pt1-xPdx)6Al3における反強磁性秩序の発生と発達をバルク物性測定で見出し,核磁気共鳴とミュエスアール測定で確認できた。磁気秩序発生の原因を磁気フラストレーションの抑制であると考察した論文を国際的学術雑誌Physical Review Bに公表した。また,東大物性研で共同利用として実施した強磁場での磁化と磁気抵抗の測定から,CePt6Al3単結晶のc軸方向でメタ磁性を見出すとともに,Pd置換系の反強磁性相の磁場・温度相図を作成した。それらの結果を強相関電子系国際会議で発表するとともに,J. Physics: Conf. Ser.に公表した。以上の成果から,おおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
ハニカム近藤格子の対称性の低下と近藤温度を独立したパラメータとしてCePt6Al3の基底状態を制御し,量子臨界線を過ぎる際の量子臨界現象と特異な磁気秩序相と超伝導相を系統的に捉えるために,下記の実験を実施する。 ハニカム面に平行と垂直方向に加圧して交流比熱をより高精度で測定し,対称性の低下による磁気フラストレーションの変化を追跡する。一軸応力の上限を高めるために,単結晶円盤状試料の厚みを現在の0.5mmの半分まで薄くする。近藤温度を上下させるために,周期表でPtの左右に位置するIr/Auで置換し,5d正孔/電子をドープする。ドープした試料における磁気秩序の発生あるいは特異な超伝導の発現を0.05 Kまでのバルク物性(比熱,磁化率,電気抵抗)測定と核磁気共鳴,中性子散乱,ミュウエスアールで調べる。 Ce(Pt1-xPdx)6Al3の核磁気共鳴と中性子回折実験の結果を照らし合わせて磁気構造を決定し,フラストレーション系特有の構造か否かを判断する。Ce以外の希土類イオンのハニカム格子系RPt6Al3 (R= Pr, Nd, Gd, Tb)における磁気フラストレーション効果を明らかにするために,単結晶試料を育成し,低温物性を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会がオンライン開催となったため,旅費が残った。6390円を次年度の予算と合わせて物品費(消耗品)として使用する。
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