研究実績の概要 |
前年度までに,希土類イオンがハニカム格子を組むRPt6Al3の内でR=CeとR=Gdの物性を明らかにした。R=Ceは重い電子的挙動を示し,そのPtを同族元素のPdで5%置換すると反強磁性(AFM)転移が発現した。一方,Ir/Auで置換すると近藤温度は上下したが,固溶限まで置換しても磁気転移は現れなかった。この結果はPd置換による磁気秩序は,Ceハニカム格子の磁気フラストレーションが弱められた為であることを意味している。R=Gdは7.4 Kでの反強磁性的秩序に伴い,ハニカム面内で小さな自発磁化を示した。これは,ジャロシンスキー・守谷(DM)相互作用によると提案した。 本年度は,R=Nd, Sm, Tbの単結晶を育成し,低温での物性を調べた。その結果,下記の事実が判った。R = Nd-TbはいずれもAFM秩序を起こすが,R = Nd, Gdでは傾角AFM構造,R = Sm, Tbは共線的なAFM構造をとる。常磁性状態の磁化率は,R = Nd,Tbではハニカム面内の方が面直方向よりも大きいのに対して,R = Smでは逆である。この磁気異方性は,結晶場効果によって説明された。TN以下では,R = Nd, Gdの磁気モーメントはc面内にあり,弱強磁性成分を伴うのに対して,R = Sm, Tbは磁気モーメントがc軸方向に向いた共線的なAFM秩序を示す。R = Smの共線的AFM磁気構造は,共鳴X線散乱実験によって確認した。一方,非共線的な磁気構造がR = Nd, Gdのみで現れるのは,DM相互作用がはたらくためである。その原因は,Rの六角形がPtの正三角形を内包することで,最近接Rイオン間の中点において反転対称性が失われるためと指摘した。さらにR = Nd, Gdの傾角AFM構造とR = Sm, Tbの共線的なAFM構造の比較から,DM相互作用のDベクトルはc軸方向を向くと結論した。
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