• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2023 年度 実施状況報告書

磁気PDF解析による重い電子的ふるまいを示す金属磁性体の磁気構造決定

研究課題

研究課題/領域番号 21K03478
研究機関国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

研究代表者

樹神 克明  国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究主幹 (10313115)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワードフラストレート金属磁性体 / 中性子散乱 / 磁気PDF解析
研究実績の概要

本研究課題では、局在電子を持たないのにもかかわらず重い電子的ふるまいを示すフラストレート金属磁性体において、伝導電子のスピンのエントロピーが低温まで残留しているかどうかを明らかにすることを目的として、これら物質の低温での局所磁気構造を磁気対相関関数(磁気PDF)解析法を用いて調べている。最終年度では典型的なフラストレート金属磁性体として知られるβ-Mnの非磁性MnサイトをCoで置換したβ-Mn0.8Co0.2について、JRR-3に設置されている高分解能粉末回折装置HRPDを用いて粉末回折実験を行い、得られたデータから磁気PDFを導出した。約10 Kで得られた磁気PDFは、同様の磁性イオンの配列を持つMn3RhSiにおける磁気転移温度以上での短距離秩序状態のものとよく似ている。このことからβ-Mn0.8Co0.2においてはMn3RhSi の短距離秩序状態でみられた6重に縮退した局所磁気構造が低温まで実現している可能性がある。この場合、この系では伝導電子のスピンのエントロピーは低温まで有限に残っていることになる。さらに磁気散乱成分を正確に抽出することによって高精度の磁気PDFを得ることを目的として、3軸分光器TAS-1においてβ-Mn0.8Co0.2の偏極中性子粉末回折実験を行った。磁気散乱成分はHRPDの非偏極中性子回折実験で得られたものとほぼ一致しており、HRPDデータから導出した磁気PDFの正当性を確認できた。より高精度な磁気PDFを得るために、偏極中性子データからの磁気PDFの導出を行っているところである。さらに得られた磁気PDFを用いて、β-Mn0.8Co0.2の低温における局所磁気構造を詳細に調べる予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

β-Mn系の研究は進行しているが、他のフラストレート金属磁性体の研究は試料準備が進んでおらず、まだ実施できていない状況である。新型コロナウイルス感染症の影響により、出席予定の学会などがオンライン開催になり、必要な情報収集や他機関の研究者との意見交換や議論があまりできなかった。

今後の研究の推進方策

重い電子的ふるまいを示すフラストレート金属磁性体について、磁気PDF解析法を用いた局所磁気構造解析を進める。β-Mn系については偏極中性子回折などで、より高精度の磁気PDFの導出およびそれを用いた局所磁気構造解析を継続していく。
また同じく重い電子的ふるまいを示す物質であるYMn系の試料を共同研究者から提供していただいたので、この系ついても同様に粉末中性子回折実験から磁気PDFを導出し、局所磁気構造解析を行う。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルス感染症の影響により、参加予定の学会などが一部オンライン開催になったため。主に中性子回折実験で用いる試料容器などの消耗品の購入に用いる予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Quantum critical behavior of the hyperkagome magnet2024

    • 著者名/発表者名
      Yamauchi H. et al.
    • 雑誌名

      Physical Review Research

      巻: 6 ページ: 013144_1-9

    • DOI

      10.1103/PhysRevResearch.6.013144

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 高分解能粉末中性子回折装置HRPD2023

    • 著者名/発表者名
      樹神 克明、井川 直樹、生田目 望、佐々木 未来、下条 豊
    • 学会等名
      日本中性子科学会第23回年会(JSNS2023)

URL: 

公開日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi