研究課題/領域番号 |
21K03480
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐々木 裕司 北海道大学, 工学研究院, 助教 (00649741)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 液晶 / 自己組織化 / パターン形成 |
研究実績の概要 |
電気インピーダンス測定および偏光顕微鏡観察を組み合わせることによって、液晶試料に印加される内部電圧の周波数依存性を記述することが可能となった。この実験では、液晶材料におけるトポロジカル欠陥のパターン形成を効率的に制御するために、試料セル基板の電極をシリコーン樹脂でコーティングし、その表面にTEMグリッドを被せて紫外線オゾン洗浄を行っている。偏光顕微鏡観察によってパターン形成を詳しく調べたところ、マスクされた領域と紫外線オゾン洗浄された領域で分子が傾く閾値電圧が明らかに異なることを見出した。電気インピーダンス測定によって得られる情報を踏まえると、マスクをして表面処理を行った際に、絶縁層(シリコーン樹脂)の膜の厚さが変化していることが示唆された。これを確かめるために原子間力顕微鏡を用いて調べたところ、表面改質に加えて、実際にシリコーン樹脂の厚さが数10nm程度変化していることを見出した。このナノスケールの凹凸構造によって試料セル内部に印加される電圧が変化し、パターンの発生を安定化させていることが分かった。続いて、表面の凹凸構造を用いて、トポロジカル欠陥のパターンを選択的に発生させ、回折光学素子としての実験を行った。実験の結果、試料近傍においてTalbot効果による光渦アレイの自己像が得られることを確かめた。複数の試料セルを用いて、自己像を重ね合わせることで試料の各々の場所で光波の変換や重ね合わせができることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電気インピーダンス測定によって、液晶試料に印加されている電圧および周波数依存性を見積もる方法を提案した。さらにインピーダンスのデータから表面の絶縁性や試料の導電性に関する情報を得られることもわかった。それによって得られた導電率や抵抗率などのパラメータを用いることで、パターン形成が観察されるかどうかについて大まかに予測できるようになった。この手法は任意の絶縁膜と液晶の組み合わせでも成り立つことが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
シリコーン樹脂を用いた実験では十分な情報が得られているため、電極に異なる材料をコーティングした系について調べ、これまでの知見が成立していかを確かめる。特に、表面の凹凸によってパターン形成が効果的に制御できるため、紫外線オゾン洗浄によって厚さが顕著に変化する絶縁材料を検討し、光学実験も進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
パターン形成のダイナミクスを調べる上で、イオンの種類の影響についても検討を行う予定であったが、現在用いている実験系で本質的な部分についてはおおよそ明らかになりつつある。さらに光学的にも独特な性質があることが分かってきた。そのため計画を変更し、光学実験も並行して進めているため未使用額が生じている。未使用額については光学実験の消耗品等に充てる予定である。
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