研究課題/領域番号 |
21K03481
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野口 博司 東京大学, 物性研究所, 准教授 (00514564)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 曲率誘導タンパク質 / 反応拡散波 / シミュレーション |
研究実績の概要 |
非平衡下で生体膜がとる多様な形状変化、パターン形成を明らかにするのが本研究課題の目的である。今年度は、曲率誘導タンパク質および、その制御因子の膜への吸着、膜上の拡散が引き起こす現象について反応拡散方程式と膜変形をカップルさせた計算を行い、膜チューブ上を伝搬する興奮波について調べた。膜変形速度を波の伝搬速度に比べて速くしていくと、膜変形による興奮波の消失が起こるようになり、さらに速くすると、興奮波がまた伝播するようになることがあることを明らかにした。また、興奮波により、球状のコブが生じる条件や波の分裂が起こる条件も明らかにした。膜チューブのネットワークでは、膜分岐での波の分裂、衝突による波の対消滅が起こる。興奮波の消失による波の逆走など、膜変形による伝搬経路の変更も見られた。 この他に、平衡、および、非平衡下での3成分系において、市松模様とカゴメ格子状の膜ドメインが形成する条件をメッシュレス膜模型を用いたシミュレーションにより、明らかにした。生体膜を挟む液体間で、曲率誘導タンパク質の濃度差がある場合、膜への吸着脱離を介した流れが生じる。また、膜チューブ形成における曲率誘導タンパク質の天然変性領域の影響も調べた。天然変性領域は、膜に自発曲率を与えるとともに、タンパク質間、および、タンパク質集合体間に斥力を与えることを明らかにした。 また、全原子分子動力学計算により、3種類の超長鎖脂肪酸の二重膜内での振る舞いも明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画の通り、膜変形と反応拡散波のカップリング、濃度差による非平衡定常状態、天然変性領域の影響についての研究を行い、概要に記述した成果を挙げた。また、計画になかった超長鎖脂肪酸のコンフォメーションについても成果を挙げた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、生体膜を挟む液体間で、曲率誘導タンパク質の濃度差がある場合において、平衡から大きく離れた条件で起こることが期待される非定常な非平衡状態について、シミュレーションを用いて、研究する。また、研究の総括を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会、研究会がオンライン開催になり、海外渡航もなく、旅費使用が少なくなった。次年度の計算機などの物品購入や研究発表の旅費に使用する。
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