研究課題/領域番号 |
21K03484
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
古石 貴裕 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (20373300)
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研究分担者 |
玉井 良則 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (50324140)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 水滴 / 分子動力学シミュレーション / 大規模シミュレーション / 1億水分子 / 水滴衝突 / 水滴分裂 |
研究実績の概要 |
1000万-1億水分子を用いた分子動力学(MD)シミュレーションにより、固体表面への水滴衝突の挙動を分子レベルで解析することを目指しており、プログラムの開発を続けている。 これまでの研究で、シミュレーションプログラムの大規模水滴系への対応ができたため、6千水分子から、現在使用できる計算機で実行可能な最大となる500万水分子までの系で水滴衝突シミュレーションを行った。その結果、水滴に含まれる水分子数が100万を超えると、より現実に使いような固体表面衝突時の水滴の衝突や分裂過程を再現できることがわかった。これは、水滴が衝突で広がるときの液膜の厚さや分裂するとき小水滴の大きさよりも、十分大きなサイズの水滴を使用できるようになったためであると考えられる。 現在使用できる計算機では1億水分子系の実行は難しいため、国内で最速のスーパーコンピュータである「富岳」を使うべく、一般試行課題に申請したところ、申請課題が採択されたため、シミュレーションプログラムの富岳への対応を行った。 富岳の CPU は同時に複数の演算を行うSIMD演算機能が搭載されており、シミュレーションプログラムを自動でSIMD演算に対応させることができる。しかし、自動でのSIMD演算対応では機械的に計算をSIMD演算に置き換えるため、最適化には限界がある。そのため、自動ではなくMDシミュレーションで行う計算に合わせて、手動でSIMD演算に対応させた最適化を行ったところ、自動最適化に比べ約2.3倍の高速化を行うことができた。また、富岳において水分子数を増やしたテスト計算を行ったところ、目標としている1億水分子系でシミュレーションを実行することができた。ただし、研究で意味のある結果を得るためには、まだ実行速度が十分でないため、今後も引き続き富岳においてシミュレーションプログラムの高速化を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理化学研究所にある計算機「皐月」を使用して、6千水分子から500万水分子の系で固体表面への水滴衝突シミュレーションを行った。 500万水分子系での結果を解析したところ、固体表面に衝突したときの水滴の挙動は6千水分子の系のときと比べて大きく異なっていることがわかった。6千水分子の系では水滴が固体表面に衝突すると水滴は柔らかいゴムボールのように円盤状に変形した後に、固体表面に吸着した平衡状態に達する。一方、500万水分子系では、水滴が固体表面に衝突すると、水滴の下部から液膜が生じて広がっていくことがわかった。 また、初期半径に対する衝突後の水滴最大半径は衝突速度が 600 m/s のとき、6千水分子系では初期半径比で1.8倍程度であるのに対して、500万水分子系では5倍程度となることがわかった。シミュレーション結果のスナップショットを見ると500万水分子系では衝突して広がった水滴の端の厚みが中央部よりも大きくなる現象が確認でき、現実の水滴衝突に近い形状を再現できていることもわかった。 水滴の衝突速度が 700 m/s を越えると、水分子数が100万以上の系では衝突で広がる液膜の先端に、幅が 2~3 nm 程度の突起状の構造が一定間隔で現れ、その後それらの一部が小さな水滴となって分裂する様子が見られた。この現象も現実の水滴衝突に対応したものであり、100万~500万水分子系の水滴を用いることで、これまでは再現できなかった現象が再現できるようになったことがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で最大で500万水分子系まで、固体表面への水滴衝突シミュレーションを行うことができた。その結果水分子数が100万以上の系では、これまでよりも現実に近い水滴の固体表面への衝突における、水滴の広がりや分裂を再現することができた。 今後は、これらの水滴サイズ依存性を調べるため、更に大きな系でのシミュレーションを行い、最大で1億水分子での実行を目指す。 現在までにシミュレーションプログラムが、国内最速のスーパーコンピュータ「富岳」でも実行可能であることの確認は行っているが、まだ富岳への最適化が十分ではない。 この原因は、計算の高速化のために行う並列処理の通信に想定よりも時間がかかっていることであることがわかっている。そこで、富岳の通信経路の構造に合わせて通信を最適化することにより、更なる高速化を行う。 十分な計算速度が得られたら、平滑面への水滴の衝突の他に、凹凸面や高分子面への水滴衝突シミュレーションを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
課題の最終年度に国際学会などに出席して研究成果を発表するために、予算を次年度に繰り越すことになった。 今年度は現地開催の学会が増えると見込まれるので、学会参加旅費として使用する予定である。
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