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2022 年度 実施状況報告書

高圧条件下における混合溶媒系の臨界普遍性と隠れた長距離相互作用の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21K03494
研究機関同志社大学

研究代表者

貞包 浩一朗  同志社大学, 生命医科学部, 准教授 (50585148)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード臨界現象 / 相分離 / 自己組織化 / ソフトマター / 溶媒和 / 高圧力 / 中性子散乱 / ダイナミクス
研究実績の概要

本研究では、4000気圧の高圧条件下におけるソフトマター(有機溶媒を含む混合溶液系)の基礎的な物性解明を目指している。その中で2022年度は、以下の研究計画を遂行した。

(i)高圧環境下での溶液構造を観察するための光散乱システムの構築:「竹田理化株式会社」「株式会社テクメイション」の2社が設計・製作した高圧セル内部にレーザー光(波長532nm、強度500mW)を透過させ、内部の試料の状態を反映した信号(透過光)を検出するためのセットアップを作成した。この状態で、高圧セルの内部を3000気圧まで安定に保つことができることも確認した。
(ii)大気圧下での光散乱実験:(i)の研究計画の最中(2022年10月頃)に、高圧セルに圧力を送り込むためのポンプが故障し、修理に半年以上を要することが判明した。そのため、高圧環境下での光散乱実験を中断し、大気圧下のみでの光散乱実験を行った。まず、166kbpの長鎖DNA(T4 DNA)に多価イオン(スペルミジン)を添加した溶液を測定したところ、温度変化に伴い構造相転移(coil/globule転移)を起こすことが光散乱データから確認できた。次に、3-メチルピリジンなどの有機溶媒水溶液にイオンを添加した溶液では、温度変化に伴い相分離を起こすことが確認できた。
(iii)高圧環境下における小角中性子散乱実験:2022年度に引き続き、日本原子力研究開発機構(茨城県東海村)の小角中性子散乱装置(SANS-U)に高圧セルのシステムを組み込み、高圧環境下におけるソフトマターのナノ構造の解明を進めた。試料として、特にタンパク質を溶解させた溶液を用いた。実験の結果、大気圧から1500気圧までの圧力環境ではタンパク質の形状を正しく測定できることが確認できた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

遅延の原因は、2つの実験設備(高圧機器)の予期しない故障と不具合である。

①圧力ポンプの故障:まず2022年8月に、上記(i)の研究計画「高圧環境下での溶液構造を観察するための光散乱システムの構築」を遂行している最中に、「圧力ポンプ内部」に錆が溜まっていることを発見した。原因を究明したところ、業者側から「圧力媒体」として指定されていた「純水」の使用が実は不適切であり、代わりに「シリコーンオイル」等の錆を発生させない溶媒を使用する必要があったことが判明した。その後、11月頃まで業者とのやりとりを行いながら研究代表者らが改善を試みたものの、錆を完全に除去することができなかった。そこで、ポンプの製造元に機材を送付し、対応を依頼した。当初、ポンプの修理期間は1ヶ月程度と連絡を受けていたものの、2023年5月時点においてまだポンプの返却がなされていない。

②中性子散乱実験を行うための高圧機材の不具合:上記実験計画(iii)「高圧環境下における小角中性子散乱実験」の実験において、試料に高圧力を与えるための機材(試料セルの窓材、試料を封入するインナーセル)に不具合が見つかり、1500気圧以上での高圧実験を行うことができなかった。本研究計画遂行のためには、4000気圧までの高圧力を長時間安定して保持する必要があるため、改善が必要である。

今後の研究の推進方策

現在、実験設備(高圧機器)の予期しない故障と不具合により遅延が発生しているため、これらの改善が急務である。まず、上記①に記載した「圧力ポンプ」の修理について、これ以上長引くようであれば、代替機を準備することを業者に依頼する。上記②に記載した「中性子散乱実験を行うための高圧機材の不具合」については、中性子散乱装置の装置責任者、高圧装置の設計業者らと密に連携し、引き続き原因究明と改善に努める。

次に、装置の故障・不具合の問題が解決されるまでの期間、高圧機器を使用しなくても遂行できる予備実験を進める。具体的には、大気圧下において、有機溶媒や生体試料を含む混合溶液系にレーザー光を照射した際に、十分な強度の信号が得られるのか、どのような解析手法が効果的であるのか等を検討する。

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公開日: 2023-12-25  

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