研究課題/領域番号 |
21K03498
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
廣田 真 東北大学, 流体科学研究所, 准教授 (40432900)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 磁気流体力学 / 自由境界問題 / 二流体プラズマ / 数値シミュレーション |
研究実績の概要 |
真空領域と接する自由境界プラズマのシミュレーションを可能にするため、拡張磁気流体力学(MHD)の方程式を直接に解くための数値アルゴリズムの検討と実装を進めた。特に本手法で重要な役割を果たす電子慣性効果を考慮した場合に困難とされる境界条件については、数学的な定式化を明らかにし、数値的実装まで行うことができた。電気抵抗や電子粘性といった散逸項を陰解法で解く場合には、境界値が陽に定まっていない逆問題となるため、時間ステップごとに境界値を調節する操作が必要になる。これは磁場が無い場合のナビエ・ストークス方程式の粘性項と類似した問題であり、グリーン関数を用いた方法によって解決できた。これにより、正しい境界条件のもとで非圧縮プラズマの計算が可能になった。 さらに圧縮性プラズマの運動を解くためには、やはり電子慣性効果を扱うため、ベクトルポテンシャルの不均一拡散方程式を陰解法で解くアルゴリズムが必要になる。また、真空領域を電気抵抗の大きい絶縁プラズマで近似する際にも、同じアルゴリズムが必要である。具体的には時間ステップごとに反復解法を用いなければならないため、できる限り効率的なアルゴリズムの使用によって計算コストの増大を抑えることも重要である。本研究では共役勾配法の一種であるBi-CGSTAB法を応用し、この問題に適した前処理を考案することで反復解法が高速に収束することを示した。これにより、圧縮性の拡張MHDシミュレーションの実現に向けて大きく近づいたといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、シミュレーションの実現に必要となる反復解法のアルゴリズムの調査と選定を行い、アルゴリズムを実装した計算モジュールを作成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
反復解法の計算モジュールを全体のシミュレーションコードに組み込み、圧縮性の拡張MHDシミュレーションの実証をする。計算の実行速度のベンチマークを行い、必要であればさらなるチューニングを行う。また、真空領域が物理的に正しく考慮されているかを確かめるため、外部キンクモードのような問題設定でテストを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響で学会がオンライン開催となったために旅費がかからず、未使用額が残った。ただし、次年度は出張が行えるようになる可能性があり、成果発表の機会も増えるため、繰越金を活用する。計画していた海外出張などが依然として難しく、未使用額が残る場合は最終的には返還をする。
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