研究課題/領域番号 |
21K03506
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
篠原 孝司 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (50354600)
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研究分担者 |
江尻 晶 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (30249966)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 高速電子 / 計測器 / TST-2球状トカマク装置 / 低域混成波 |
研究実績の概要 |
TST-2球状トカマク装置で実験されている低域混成波(LHW)のみでプラズマ電流を維持しているプラズマにおいて、想定される電子の速度空間分布はMaxwell分布にLHWと相互作用して発生した高速電子が追加された分布である。Maxwell分布と異なる分布の表現において、Maxwell分布のように温度といった簡単な指標(分布のモーメント)の“空間”分布での表現は不十分である。そのため、高速電子の特徴と役割の理解には速度空間も含んだ広い位相空間を理解することが求められ、多角的な計測が求められる。これまでの計測はX線などによる間接的な計測であったが、本研究では新たにプラズマ最外殻磁気面より外側に飛来する高速電子の特性の直接的な計測を目指す。 高速イオンにおいて高時間分解能で速度分布の情報をうる計測器として利用されてきた損失高速イオン検出器(FILD)という計測手法がある。この手法での検討を行った。波と粒子の相互作用を扱える計算コードによると発生する高速電子のピッチ角は0度付近の数度程度である。ピッチ角が数度程度のため、磁場に垂直方向のラーマー半径は3mm以下と小さく典型的なFILDのオリフィスとスクリーンの位置関係での構成は成立しないことがわかった。そこで、2つのオリフィスを用いて軌道を限定して高速電子を捕獲して、速度空間情報を得るという方針をとることにした。この方針において製作可能な条件でどの程度の分解能が得られるか高速電子の軌道を計算して評価した。結果、捕獲した高速電子のエネルギーの情報をうることは難しいがピッチ角の情報は計測できることがわかった。この結果に基づいてチャンネル毎に特定のピッチ角の高速電子を捕獲するプローブを設計している。 加えて、検出に使用する無機シンチレータZnS(Ag)が、測定対象の>30keVの高速電子にも応答があることをベータ線源Ca45を用いて確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2つのオリフィスを用いて軌道を限定して高速電子を捕獲して、速度空間情報を得るという方針をとることにして、設計を進めた。設計条件にはTST-2球状トカマク装置で使用できるポートの大きさやプローブの出し入れに用いるベローズの内径などがある。また、計測できる速度空間の数(チャンネル数)として3つは欲しいと考えた。 これらより、内径35mm程度の空間に3つのチャンネルの構造を設けるようにコンパクトに設計する必要がある。このことは、2つのオリフィスの相対位置の製作精度に影響を与える。角度1度程度の精度を10mm程度の空間で持たせようと思うと製作精度は0.1mm以下と小さくする必要がある。このように非常に精密な構造をもたせる必要が出てきた。製作費用が本研究費に見合うように工夫する必要が発生し、その設計に時間がかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
検出器の設計に時間を要しているが、本研究費にて製作は可能と考えている。2つのオリフィスを用いて軌道を限定して高速電子を捕獲して、速度空間情報を得る方式にて、プローブ先端部の製作を行う。加えて、蛍光体での発光を導光する機構の設計と製作も進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
非常に精密な構造をもたせる必要が出てきた。製作費用が当該研究費で賄えるように設計変更を行っているため、本年度の執行には至らなかった。製作可能な額の設計ができ次第執行する。
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