研究課題
球状トカマク装置は、磁気エネルギーに対するプラズマ圧力の比が大きいプラズマを維持できる特性を持ち、経済性の高い核融合炉が期待できる。球状性を増加させるためには、電磁誘導方式のプラズマ電流駆動に用いる電磁コイル(センターソレノイド:CS)の役割を減じ、代替の電流駆動手段を開発する必要がある。TST-2球状トカマク装置では低域混成波(LHW)で効果的に電流を駆動する研究を進めている。LHWは電子を加速し電流を生み出す。LHWがプラズマと相互作用するとき静電波として振る舞うため、LHWによる加速にて生成される高速電子は磁力線に沿っている。磁力線に対する粒子軌道の向きをピッチ角で定義するが、そのピッチ角はほぼ180度となる。なお、ここでは、180度引いた角度で再定義し、そのピッチ角はほぼ0度となる。高速イオンにおいて速度分布の情報をうる計測器として損失高速イオン検出器(FILD)という計測手法がある。この手法では、高速イオンのラーマー半径が5mm程度以上ということを利用して、高速イオンのピッチ角とエネルギーが測定できる。しかしながら、ここで対象とするピッチ角の電子ではラーマー半径が3mm程度以下しかないため、同様の構成は取れない。そこで、2つのオリフィスを用いて軌道を限定して高速電子を捕獲して、速度空間情報を得るという方針をとることにした。製作可能な構造をもとに行った数値計算の結果、捕獲した高速電子のエネルギーの情報をうることは難しいが3度程度の分解能でピッチ角の情報は計測できることがわかった。この成果をまとめて学会等で発表を行うとともに査読付論文として投稿し、採択された。この結果に基づいてチャンネル毎に特定のピッチ角の高速電子を捕獲するプローブを設計した。直径0.1mm程度の穴を精度よく配置する難しさがあり、要素技術の確認のための試作と設計変更を行い、製作を開始した。
4: 遅れている
2つのオリフィスを用いて軌道を限定して高速電子を捕獲して、速度空間情報を得るという方針をとることにして、設計を行った。製作する穴の直径は最小約0.1mmとなった。角度1度程度の精度を10mm程度のオリフィス間距離で持たせる必要があり、製作精度は0.1mm以下と小さくする必要がある。このように非常に精密な構造をもたせる必要が出てきた。製作費用が本研究費に見合うように工夫する必要が生じた。そこでレーザーによる穿孔を検討し、要素技術の確認のための試作を行った。試作により設計変更の必要性が発生したため、時間を要している。
検出器の製作開始までに時間を要したが、製作を開始することができた。蛍光体での発光を導光する機構の設計と製作も進め、全体を統合した動作試験を進める。
非常に精密な構造をもたせる必要があり、製作費用が当該研究費で賄えるような製作手段の検討と試作に時間を要したため、本年度の執行には至らなかった。
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Plasma and Fusion Research
巻: 18 ページ: 2402006-1~-6
10.1585/pfr.18.2402006