研究課題/領域番号 |
21K03507
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
古川 勝 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (80360428)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | MHD安定性 / 疑似アニーリング / エネルギー極小 / 非正準Hamilton力学理論 / Casimir不変量 |
研究実績の概要 |
磁場閉じ込めプラズマによる核融合研究では,磁気流体力学(MagnetoHydroDynamics, MHD)的な運動に対して安定な力学平衡を作ることが必須である.MHD安定性はエネルギー原理やスペクトル解析といった方法を用いる理論で解析されてきたが,負エネルギーモードや臨界安定な系の非線形不安定性といった未解明な点が残されている.本研究では,MHDモデルのハミルトン構造を利用し,系のエネルギーを単調減少させることができる疑似アニーリング(Simulated Annealing, SA)法を用い,既存の方法ではわからなかったMHD平衡・安定性の性質を調べている.令和3年度までの研究で,磁気エネルギーと運動エネルギーの片方がなかなか減少しないことにより,エネルギー極小状態(平衡)に至ったかどうかの判定が数値計算的に非常に難しいことがわかっていた.令和4年度は,このエネルギー減少をバランスし緩和を加速させる方法を考案した.平衡プラズマ流がない場合には,理論的予測の通り,SAによって中立安定な平衡に戻ることを示した.この成果は令和4年9月にPhysics of Plasmas誌に掲載され,Editor’s Pickに選ばれた.令和4-5年度は,エネルギーを単調減少させる経路を取るSAに,エネルギーを保存する経路を加えた場合に,平衡への緩和を加速できないかを調べた.SA単独の場合よりも緩和が早くなるかどうかは,系の運動エネルギーが大きく変化するかどうかによっていることを示す結果が得られた.計算物理学に関する国際会議のプロシーディングが掲載可となった.さらに,負エネルギーモードが存在する磁気回転不安定性の解析のために4場の簡約化モデルを導出し,そのハミルトン構造を含め研究を進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は,エネルギー極小状態(平衡)への緩和を加速できる方法がないかを検討するために,エネルギーを単調減少させる経路を取るSAに,エネルギーを保存する経路を加えて,平衡への緩和の様子がどのように変わるかを調べた.エネルギーを保存する経路を加えることによって緩和が早くなる場合は,運動エネルギーが大きく時間変化していた.その理由を調べるために,MHDモデルのある側面を模擬する有限自由度の力学系モデルを作った.このモデルは負エネルギーモードの研究にも用いることができ,研究を継続している.また,負エネルギーモードが存在する系でSAを行った場合に何が起こるかを調べるために,磁気回転不安定性を再現できる4場の簡約モデルを導出した.線形解析によって先行研究を再現している.また,このモデルのハミルトン構造を明らかにしつつある.
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度から継続して,有限自由度のモデルを用いて緩和の加速ならびに負エネルギーモードがある系について研究を進める.また,4場の簡約モデルを用いて負エネルギーモードの解析を進め,さらに疑似アニーリングを行う.これらの成果を国内外の学会で発表するとともに,論文にまとめられるように研究を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3, 4年度にコロナ禍で出張できず,繰越金があり,令和5年度は外国出張も含め積極的に成果発表や共同研究の議論を行ったが,依然として残額が出る見込みだったので,令和6年度にも共同研究の議論や成果発表を積極的に行うために研究期間延長を行ったため.
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