研究課題
磁場の勾配が強い球状トカマクでは,プラズマ加熱高周波の周波数を選択することで,プラズマ中心部に高調波共鳴層が複数存在する状態を作り出せる.九州大学の球状トカマク実験装置QUESTにおける電子サイクロトロン加熱では,高エネルギー電子の影響で第二-四高調波共鳴がプラズマの広域で起きる.高エネルギー電子が生成されると,相対論的ドップラーシフトが起きて高周波の共鳴条件が変化し,電流駆動方向に運動する電子が逆方向に運動する電子よりも加熱されて正味の電流が流れる.球状トカマクの電子サイクロトロン加熱電流立ち上げ実験において,その電流駆動機構を明らかにするためには高エネルギー電子のダイナミクスを理解することが鍵になる.そこで高エネルギー電子に起因する制動放射X線の空間分布観測を行っている.本研究では広い視野を持つX線ピンホールカメラを開発している.検出器は80 x 80のCdTe(カドミウム・テルル)アレイ素子を有するHEXITECを利用した.この検出器は5 kHzのフレームレートで200 keV以下のX線スペクトルを取得出来る. ピンホール部はX線遮蔽効果に優れたタングステン合金(ヘビーアロイ)製とし,HEXITEC検出器の正面に設置した.視野角は68°となる.またHEXITEC側面のX線遮蔽部は鉛製とした.開発したピンホールカメラをQUEST装置に設置し,プラズマ電流50 kAを超える球状トカマクの観測に適用した.実験ではプラズマが生成される約2秒間にわたって硬X線の二次元分布を測定し,トカマクプラズマ観測としての初期データを得た.
2: おおむね順調に進展している
タングステン合金(ヘビーアロイ)及び鉛を使ったピンホール付きX線遮蔽ボックスの設計・製作が順調に進み,球状トカマク実験装置に設置可能になった.遮蔽ボックスは中のスペースを十分取ることで様々な検出器が設置可能である.研究計画策定時はHEXITECを使った実験は二年目以降の予定であったが,前倒しで実施できた.ピンホールカメラはトカマク装置のセンターポストを中心として両側を見込む視野を持つため,順/逆電流駆動方向に運動する電子からの制動放射X線を同時観測可能である.二次元分布の対称性が破れていることが予想されていたが,実験でもその傾向があることが観測された.更にリミターなどプラズマに接する金属体が強いX線源となっていることがわかった.二年目以降の実験では,これらの知見を元にして新しいX線検出器の開発や実験における観測を行うことができる.
HEXITECを使った観測データはX線放射スペクトルの二次元分布を時間的に蓄積したもので,そのデータ解析を進める.プラズマ電流立ち上がり時やトカマク形成後などプラズマの状態によるX線の変化を調べる.また磁気計測などの他の実験データとの比較も行う.二年目以降は,計画時にHEXITECよりも先に導入する予定であったシンチレータを使ったピンホールカメラを開発する.ピンホールカメラ内に設置するシンチレータプレートを選定し,トカマク実験に適用してX線観測を行う.このときシンチレータの発光を高速カメラで撮影し,X線の二次元分布を高速・高解像度で観測する予定である.
すべて 2022 2021 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 5件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件) 備考 (2件)
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