研究課題
トーラス型磁場閉じ込めプラズマ中での非熱的な高エネルギー電子のエネルギー散逸機構や,それが介在する物理現象の解明へ向け,自発励起波動との相互作用を含めたトカマクプラズマ中の高エネルギー電子ダイナミクスを実験的に調べることを目的とし,以下の研究を実施し,進展を得た.QUEST球状トカマクに大型装置では難しい特色ある高周波波動計測環境を整備した.弱磁場側の高速駆動磁気プローブによるプラズマ内部での高周波波動計測,強磁場側センタースタックの保護タイル裏側での同時計測から,プラズマ電流の急激な減衰時における数10MHzから250MHzの広帯域にわたる複数のバースト様高周波波動の励起,IPN配位におけるプラズマ電流定常状態での突発的な波動の励起・周波数チャープ・消滅の高繰り返しイベント等を見出し,QUEST球状トカマクでの高周波出現の状況が明らかになった.強・弱磁場側での励起波動の顕著な差異や,アップ・ダウンチャープへの分岐現象が異なる複数の周波数バンドで同時に発生する様子等が観測され,高速電子の速度分布の空間位置依存が実験的に示唆された.常時計測が可能(特別放電が不要)な高磁場側での良好な計測実績を踏まえ,高磁場側への高周波コイルアレイの設置,信号取得装置のメモリ増設による実験効率の向上を実施した.高速電子をピッチ角弁別しながら直接計るプローブについて,センサーの動作確認を終え,QUEST実機への設置のための真空プローブ機構の部品を順次調達し,アセンブルに取り掛かった.
2: おおむね順調に進展している
QUEST非誘導放電において励起される高周波について,発生する放電条件とその特徴について大まかに整理でき,また高磁場側へ設置した高周波ピックアップコイルにおいて十分な強度での計測実績が得られ,これを基に2方向波数計測,偏波計測,静電・電磁成分識別,上下非対称性等を調べるためのコイルの多点化を完了した.さらに,プラズマパラメータが変化する時間スケールでの高周波の変動を取得するための高速オシロスコープのメモリ増設を完了し,実験効率が格段に向上した.以上より,波動計測については計画以上の進捗が得られ,もう一つの主要計測器である高速電子プローブについても部品調達・製作が進み,2年目での設置の見通しが得られた.
1年目に整備・強化できた波動計測器による波動同定を進めると同時にもう一つの主要計測器である高速電子プローブの据付,調整,実機試験を実施する.このプローブによる高速電子の位相情報の取得にチャレンジし,高周波計測との相関解析から,波動と電子の相互作用について評価する.併せて,計測がうまく進展しない場合に備え,相補的に高速電子情報を得るための,硬X線検出器と斜めECE計測について高時間分解能化を図る.
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件)
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