研究課題
非熱的な高エネルギー電子は,電子サイクロトロン波による非誘導プラズマ電流立上げや,ディスラプション後の逃走電子ビーム発生過程で支配的な役割を果たすことが分かってきている一方,位相空間での非線形ダイナミクスが介在して波動との相互作用が本質となっていること,また高エネルギー電子束自体の計測手法が確立されていないことなどから,十分な理解が得られていない.本研究では,電子サイクロトロン波により比較的容易に高エネルギー電子を生成できるQUEST球状トカマクにおいて,入念な波動計測と共に,高エネルギー電子の位相空間での情報を新しく高精度に得て,自発励起波動を含めた高エネルギー電子の位相空間ダイナミクスを実験的に調べる.高エネルギー電子をピッチ角弁別して直接計測する挑戦的な高エネルギー粒子プローブ(EPP)が完成し,実機実験を通して原理実証を行った.直接計測で最大の懸念であったプローブ衝突電子による高強度の制動X線に対しても,時定数2nsの超高速応答の検出器と高スループットの処理システムにより,数M cpsまで処理でき,QUESTプラズマの周辺領域において狙いの計測が可能なことが確かめられた.粒子軌道を制限するピンホールと二組の等価な検出器の差を用いて,硬X線と高エネルギー電子の信号を切り分けることができ,SOL領域における高エネルギー電子のピッチ角分布が得られた.また,SOL領域において最外殻磁気面を逸脱して広い空間領域にわたって高エネルギー電子が存在していること,QUESTではその到達限界が外側局所リミターでなく,トロイダル方向に連続して存在する上下の高温壁であることが示唆された.さらに,高エネルギー電子起因の硬X線放射強度を高速に測れたことで,高エネルギー電子束が自発励起の高周波と同じ周波数で揺らいでいることを世界で初めて見い出し,波動粒子相互作用の実験的証拠を得た.
1: 当初の計画以上に進展している
挑戦的な高エネルギー粒子プローブが完成し,SOL領域における高エネルギー電子束のピッチ角分布が世界で初めて得られ,また超高速での硬X線計測という副産物から,高エネルギー電子束自体が高周波数で揺らいでいることが発見された.当初予定していなかった新しい研究展開が見いだされたため,計画を超える研究を推進できる.
これまでに整備された革新的な高エネルギー粒子プローブと念入りな波動計測システムを用いて,物理実験をQUESTにおいて進める.ツールとして,非誘導でプラズマを立ち上げた後にセンターソレノイドコイルを用いてトロイダル電場を加える.これにより位相空間での発展を能動的に変化させる.また,垂直方向エネルギーの指標として,ECE計測も新たに追加する.視野を絞った高速の硬X線検出器も別途整備できたので,これを用いて相互作用領域の特定を目指す.
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