レーザー核融合を実用炉まで発展させるためには高速、高精度、高繰り返しが可能なターゲットインジェクション技術が不可欠である。特に高速点火核融合方式のコーン付きターゲットは形状が複雑であり、コーンを追加熱方向に向けなければならないという姿勢の制約もある。 2021年度に電磁力を利用した燃料射出システムを製作した。これは、鉄製のサボーを使用し、電磁石コイルにコンデンサからの電流パルスを印加して磁化、サボーを吸引して加速するものである。 2022年度には加速管をステンレス製からポリカーボネート製に変更し、加速中からサボ分離後まで高速度カメラで観測することで、姿勢の乱れの要因を調べた。その結果、加速管の振動や分離時の姿勢の乱れが飛行姿勢の悪化につながることが判明した。治具により装置の振動を抑え、加速管に設置した部品により物理的にサボを分離(衝突分離と名付けた)したり電磁石コイルの磁力を用いて分離することにより、分離後の角速度を小さくすることに成功した。 2023年度は様々なターゲット形状、ホルダ形状を使用してガスによる高速射出を行い、速度、姿勢の変化を調べた。その結果、希望の速度に加速するための加速管、ガス圧力、電磁弁開放時間等のパラメータについて設計指針を得ることができた。また、姿勢の改善はみられたが射出速度が遅いことが問題であった電磁力による射出について、大型のコンデンサバンク、電源回路を新規に作成し、これまでの2倍のピーク強度のパルス電流を流せるように装置改良を行った。その結果、従来の電源では4段階の加速により到達していた22m/sを1段階の加速で達成することに成功した。 これらの成果により、ガスを用いた射出装置の設計指針が得られ、電磁力を用いた射出装置の高速度射出達成の目途が立ったと言える。
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