研究課題/領域番号 |
21K03515
|
研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
鈴木 千尋 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (30321615)
|
研究分担者 |
藤井 恵介 京都大学, 工学研究科, 助教 (10637705)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | タングステン / 分光モデル / 機械学習 |
研究実績の概要 |
ITERプラズマの周辺部に存在しうる、タングステン多価イオンからの極端紫外域の発光スペクトルは、膨大な数の発光線が密集した、Unresolved Transition Array(UTA)と呼ばれる複雑な構造を持つ。本研究では、UTAの形状とプラズマパラメータの関係について、機械学習の手法を活用することで実測ベースでモデル化して解析することを目的とする。 そのために必要な幅広いパラメータを持つプラズマからのデータを生成するために、本年度は、レーザー生成プラズマからのUTAスペクトルを観測をするための実験システムの構築と整備を行った。具体的には、光学架台上にターゲットチャンバーを設置して、その真空排気系を構築するとともに、チャンバー内にタングステンターゲットを設置し、その位置を外部から制御するための三軸・ゴニオ自動ステージによる制御システムの構築、および偏光ビームスプリッタ・波長板・ミラー・レンズを組み合わせたレーザー光導入部の光学システムの設置をそれぞれ完了させた。これらの整備の結果、実際にタングステンのレーザーアブレーションプラズマの生成が可能な段階に到達した。 あわせて、核融合科学研究所の大型ヘリカル装置(LHD)実験においては、新たに不純物ペレットによるタングステンの入射実験を行って、極端紫外域のUTAスペクトルに関するデータを追加で取得するとともに、過去のLHD実験で蓄積された大量のデータを精査し、タングステンスペクトルのデータとトムソン散乱計測による電子温度・密度分布のデータを集めて、機械学習アルゴリズムに流すためのソフトウェアを、python言語を活用して整備した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
レーザー生成プラズマについては、プラズマ生成が可能な段階には到達したものの、既存の分光器を活用した分光計測系については、その構築が遅れている。また機械学習に関しては、ソフトウェアの開発について進展がみられたが、その実装はやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
レーザー生成プラズマからのUTAスペクトルの観測に向けて、既存の極端紫外分光器をターゲットチャンバーに設置し、実際に分光計測を行って、様々なレーザー照射条件下でスペクトルデータを蓄積する。LHD実験についても、これまでに開発したソフトウェアを実装し、過去の実験データに適用することで、機械学習を活用したデータ解析に着手する。 なお、研究分担者であった藤井は、海外研究機関への異動のため分担者から外れるものの、その役割であるソフトウェア開発自体は、インターネットを介して海外からでも可能であるため、引き続き研究協力者として参画する。ただし研究の方向性としては、協力者の時間的制約も考慮し、研究目的を逸脱しない範囲で、統計的モデル化に適した実測データの広範な取得と整理により重点を置くものとする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
国際会議・国内学会の現地開催が中止され、旅費を執行できなかったため。レーザー生成プラズマ実験に必要な真空部品・光学部品などの消耗品費として使用する予定。
|