研究実績の概要 |
大型ヘリカル装置(LHD)では、体積平均ベータ値が約5%の安定な高ベータプラズマが得られている。ここでベータ(β)値は、磁気圧に対するプラズマ圧力の比である。先行研究による高ベータLHDプラズマに対する運動論的MHDシミュレーションでは、ヘリカルリップルに捕捉された熱イオンが、圧力勾配駆動型MHD不安定性を抑制する効果を有し、高ベータ状態を維持する上で重要な役割をすることが示されている。この先行研究の解析で用いられたMHD平衡の中心ベータ値はβ_0=7.5%で、その磁気軸は、LHD実験で得られている高ベータプラズマの磁気軸よりも外側に位置する。本研究課題では、実験により即した平衡に対する解析を目的として、LHD実験で得られた体積平均ベータ値が4.8%のプラズマと同じ位置に磁気軸を持つ平衡(β_0=6.3%)に対して解析を行った。その結果、β_0=7.5%の場合と同様に、最も不安定なモードは(m,n)=(3,2)のインターチェンジモードであり、MHDモデルの場合と比較して成長率は約1/10に低下すること、および、非線形状態における不安定性の影響はプラズマ周辺部に限定され、中心の高ベータ領域が維持される結果が得られた。ここで、m,、nはポロイダルモード数、トロイダルモード数である。一方、シミュレーションから得られた最終的なモード構造を比較すると、最も振幅の大きいモードがβ値に依存することがわかった。β=7.5%においては(m,n)=(1,1)モードが支配的なモードであったが、β=6.3%においては、一時的に(m,n)=(1,1)モードが支配的なモードになるものの、最終的には(m,n)=(2,2)モードが支配的なモードになる。最終的に得られるモード構造の形成メカニズム、および、そのβ値に対する依存性の詳細な解析を今後進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度においては、圧力勾配駆動型MHD不安定性に対する熱イオンの運動論的効果のベータ値依存性の解析を行なった。LHD実験結果と同様に、シミュレーションにおいても高ベータプラズマが維持される結果が得られたが、一方で、シミュレーションで得られた不安定モードのモード数と、実験で観測されるモード数に違いが見られる。実験結果、シミュレーション結果ともに、(m,n)=(1,1)モードは見られているものの、シミュレーションで見られた(m,n)=(3,2)モードは実験では観測されていない。今後は、不安定モードのモード数に対しても実験結果を再現するように、計算モデルの改良を進めていく。本年度では、反磁性ドリフト効果も含めた解析も実施する予定であったが、反磁性ドリフト効果を加えた計算を行うと、パラメータ領域によっては数値的な不安定性が現れ、十分な解析を行うことができなかった。そのため、当初の予定よりも計画がやや遅れている。数値的な問題を早急に解決し、次年度において反磁性ドリフト効果の影響を調べる予定である。
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