研究課題/領域番号 |
21K03518
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
東條 寛 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 那珂核融合研究所 先進プラズマ研究部, 主幹研究員 (80549212)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | トムソン散乱計測 / 偏光 / 電子温度 |
研究実績の概要 |
R3年度は提案する計測方法の精度や精度自体を向上させるための信号手法を開発し、理論的な側面から同計測手法の信頼性をサポートする成果が得られた。 2つのレーザーからそれぞれ発生するトムソン散乱光について、検出される光量を求め、計測精度を詳しく計算した結果、電子温度が10 keVの時、12%程度の精度で電子温度が計測できることを明らかにした。より高い電子温度で計測精度が向上するパラメータ依存性も確認した。上記の結果と他のパラメータ依存性を今後まとめる。R4年度に国際会議にて成果発表を予定している。 トムソン散乱光の検出器での信号は微弱なので、計測精度向上のためには小さな信号量を正確に抽出する手法の開発が必須である。新たに舟場久芳氏(核融合科学研究所)を研究協力者とし、共同で「モデルフィッティング」と命名した信号量抽出手法を開発した。実験前にレーリー散乱較正によって多数のデータ波形を取得し、平均して得た信号波形を作成することを想定する。本番の実験にて得たトムソン散乱による波形に当てはめ、信号強度を高速かつより正確に評価できる。仮定した理想的なトムソン散乱光による信号波形に人工的なノイズを加え、電子温度を評価するシミュレーションでは、電子温度の系統的な誤差を約 1.1keV から 0.1keVに低減できる結果を得た。本開発はR6年度に実施する予定であったが、実証実験を行う期間が制限されることを想定し、前倒して実施した。得られた結果について、国際会議にて1件の口頭発表と1件の論文投稿を行なった。 本研究の実証実験で使用するレーザーのビーム出力強度分布は均一ではなく、空間的にピークを持ち、時間的にも強度分布が変化し安定しない。これらを改善するためR4年3月に大阪大学にて非線形光学素子(位相共役鏡)新たに製作し、レーザー装置に組み込んだ。今後調整試験を行い性能改善の有無を評価する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R3年度に予定していた計測手法のパラメータ依存性については、計測原理に関わる電子温度の計測精度への依存性のシミュレーションを完了することができた。計測に使用するレーザーについての性能改善や、集光光学系に関する偏光状態の評価は実施できなかったものの、信号強度手法の開発を前倒しで行い、成果発表も行うことができた。以上により、進捗状況は「おおむね順調に進展している」と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
R4年度は高電子温度を有する複数の核融合プラズマ装置にて本研究にて提案する計測手法を広く伝えるために、装置特有のパラメータ(散乱角、集光立体角等)についての計測精度のシミュレーションによる詳細な評価を進める。国際会議発表、論文発表を1件ずつ実施することを予定している。シミュレーションを行う際に時間が想定以上にかかる場合にはR4年度に予定していた検出器の設計をR5年度に実施する等、実施計画を変更する。計測に利用するレーザーについて、レーザーをプラズマに入射した際に計測の必要条件(ビームウエストが5mm程度以下)を満たすことができるかを確認する。満足しない場合には、集光角度を調整するためのレンズを追加する等調整作業を行う。また、集光光学系内での偏光状態の変化を評価することを予定していたが、利用する集光光学系がまだ完成されていない。完成後に確定した光学データを基に上記を実施した方が効率が良いと判断し、R4年度以降に先送りにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
集光光学系内での偏光に関する詳細評価は、集光光学系が完成するR4年度以降に実施する方が効率が良いため、R3年度では関連する計算機等の購入を見送った。翌年度では、上記の計算機(実施した場合)等の調達、学会発表(旅費を含む)に必要な費用を支出する予定である。光学設計用のソフトウェアを当初購入する計画だったが近年高額となり、予算も限られているので、計算プログラム等を自作し計算することも考慮に入れ研究を進める。
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