酸化物半導体(OS)薄膜の品質向上が求められており、OS薄膜の製造法として、パルスレーザー蒸着法(PLD)が着目されている。PLDは、点ソースであるため成膜範囲が狭くなり、非均一性が生じやすいといった課題がある。また酸化や窒化が生じにくく、反応性成膜にも課題がある。本研究ではPLDへプラズマ場を導入した複合PLDプロセスにより課題の解決を目指した。まず初年度ではECRプラズマを背景とした複合PLDプロセスにより、PLD法で生じたアブレーション中タングステン粒子がECRプラズマにより輸送及び堆積することが確認された。さらに、酸素プラズマの使用で酸化タングステンの薄膜が形成され、化学反応を伴う堆積が可能であることが示された。また、2年度以降にはマグネトロンプラズマ源を用いた複合PLD装置も整備され、LiCoO3薄膜の成膜に成功し、酸素プラズマによる酸素欠陥の低減効果についても示された。実験では、酸素ガスおよび酸素プラズマを背景として薄膜形成が実施され、圧力、プラズマパワーなどを変えた際に得られる薄膜の組成がどう変化するか、XPSやラマン分光法を用いて調べた。さらにLiCoO3薄膜を電極として用いたリチウムイオン電池のテストセルを作製し、その性能についても評価した。以上より、複合PLDプロセスにより、成膜範囲の拡大、均一性の向上、反応性の向上などOS薄膜の品質が改善する可能性を示す研究となった。
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