研究課題/領域番号 |
21K03527
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
清水 鉄司 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究グループ長 (70803881)
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研究分担者 |
榊田 創 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究部門付 (90357088)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 低温大気圧プラズマ / プラズマ医療 / プラズマ照射溶液 / 輸送 / 気液界面 / 溶液中微粒子 / 電位形成 / たんぱく質 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、医療・バイオ分野における低温大気圧プラズマの利用を加速するため、大気圧環境下でプラズマを液体に照射し、その際の溶液中帯電粒子輸送を理解し、それを制御することにある。 本年度は、昨年度中に立ち上げを行った針電極・液面間放電装置を用い、液中粒子運動の可視化を試みた。その前段として、プラズマ照射にともない液体のpHが変化することを利用し、メチルレッドやメチルオレンジを用いて溶液中の流れの可視化を行った。プラズマによる流れ形成は、気流との摩擦によるものや浮力・表面張力変化などの影響を受ける。実験の結果、プラズマ生成パラメータやプラズマ生成法に依存して、液中流速やその向きが異なることがわかった。プラズマパラメータと流れの間の関係を検討中である。 溶液中の帯電粒子として、本年度はアルブミン(血中たんぱくの一種)を主に使い実験を行った。アルブミン溶液は、プラズマ照射によりほとんどpHが変化せず、アルブミン分子の電荷はほぼ一定と考えられるためである。針電極を用いた放電をアルブミン溶液に対して照射したところ、アルブミンがプラズマ放電部直下に凝集した。プラズマ処理初期では、ほぼ一定の速度で凝集物が大きくなることがわかった。その後、アルブミン凝集物があるサイズに達すると、凝集物から小さい凝集物が分離していく様子を再現性良く観察した。現在、プラズマ生成の電流の揺らぎや液中の流れなどとともに、凝集メカニズムと溶液中の電位形成について検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書に記載したとおり、プラズマ照射にともなって生じる溶液中微粒子挙動の観測を行っており、おおむね研究は順調に進んでいる。 本年度は、昨年度製作したプラズマ照射装置を用いて、おもにアルブミン溶液に対するプラズマ照射実験を行った。その結果、アルブミン凝集とそれに伴う微小アルブミン凝集物の運動を観測することが出来た。現在は、流れ場と溶液に形成される電位分布のモデリングを行っており、凝集過程の理解を進めているところである。 また、凝集と流れを同時測定するため、複数のカメラを同期させて測定する装置を制作している。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度では、液中粒子の運動理解のため、アルブミン凝集メカニズムを明らかにし、溶液中の粒子帯電状態や電位形成の理解を進める。 具体的には、プラズマ生成パラメータを変化させることにより、帯電に関係する電気パラメータを制御し、それらとアルブミン凝集や粒子運動との理解を深める。また、粒子運動と流れ場の同時計測を行うため、複数のカメラを設置し電気パラメータと同期して粒子運動などをとらえる予定である。 そのほかに、化学的活性種の液中粒子の運動への影響を観察するため、プラズマ生成中の雰囲気ガスを制御可能な装置を製作し実験を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度予定していたプラズマ生成装置の一部を自作した。そのため、支出が予定より低くなった。余剰分は次年度に繰り越す。 次年度は当初予定通り研究を実施し、繰り越し分は主に微粒子などの消耗品に充当する。
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