研究課題/領域番号 |
21K03531
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
武田 真滋 金沢大学, 数物科学系, 准教授 (60577881)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | テンソルネットワーク / 粗視化アルゴリズム / テンソルくりこみ群 / 実時間ダイナミクス |
研究実績の概要 |
テンソルネットワーク法はモンテカルロ法の弱点である符号問題がないという利点はあるものの、従来型のアルゴリズムを使用すると高次元系での計算コストが劇的に増加してしまうという問題を抱えている。そこで、本研究課題では効率的な高次元粗視化アルゴリズムの開発を目標の一つとして掲げている。その問題の解決法の一つして、多数の添字をもつテンソルを3つの添字をもつテンソルによって近似的に表現するというTriad化のアイデアを用いて計算コストを下げようという試みがある。しかし、既存の研究によると、このTriad化の近似によって物理量の計算精度が大幅に低下することが知られていた。そこで、この精度低下の問題を改善するために、環境効果を取り入れたSRGというアイデアをTriad化のアイデアに組み入れる研究を開始することにした。2021年度は最初のステップとして物理系の次元を2次元に限定し、Triad化とSRGの融合が機能するのかを詳細に検証することにした。具体的には2次元正方格子上のイジングモデルを採用し、厳密解との比較を行うことで新融合アルゴリズムのベンチマークテストを行った。その結果、従来法よりもコストパフォーマンが数倍から10倍程度向上することが確認できた。そして、論文としてまとめて発表を行った。 本研究課題のもう一つの目標である実時間経路積分の直接評価については、1+1次元実スカラー場理論でベンチマークテストを行っておりすでに計算結果は出ている。現在は、論文を執筆している段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目標の一つである、粗視化アルゴリズムの改良方法の開発が順調に進み、論文発表や研究会での発表を行うことができた。順調に研究が進捗したのは、すでに知られている環境効果を取り込んだアイデアと、添字を多数有するテンソルを細かく分解して扱うというtriad化のアイデアを効果的に融合させることができたのが主な要因である。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度に完成させたアルゴリズムは2次元系専用であった。次の目標は3次元以上の系にも適応できるようにアルゴリズムを一般化させることである。その実現のためには、任意次元の系にも適応できる高次テンソルくりこみ群という別のアイデアと融合させる必要がある。また、高次元系特有の局所相関の除去という新たな課題にも取り組む必要がある。しかし、この課題についてもすでに様々な改良法が提唱されており、それらを試しながら最適な組み合わせを探し出したいと考えている。 本研究課題のもう一つの目標である、実時間経路積分を直接評価するアルゴリズムの開発については、すでに計算結果は出ておりまとめの段階にある。2022年度中に論文として発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)本年度に生じた残金は有意義な使用を行うには半端な金額となったため、次年度の助成金と合わせて使用することにより、より有効な使用計画が可能となると判断した。 (使用計画)次年度に請求している助成金と合わせて、研究成果発表のための旅費や、学外から招聘する講師によるセミナー等を通じた専門知識の提供に対する謝金として使用する予定である。これらを通して研究が最も効率的に推進できるように、研究費の使用については最大限の配慮を行う。
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