研究課題/領域番号 |
21K03535
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
石井 理修 大阪大学, 核物理研究センター, 准教授 (40360490)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 格子QCD / ハドロン構造 / ダイクォーク / シュレディンガー方程式 / チャームクォーク / 構成クォーク模型 / クォーク・反クォークポテンシャル / バリオン |
研究実績の概要 |
Λcバリオンを ud scalar diquarkとcharm quarkの2体系とみなし、同時刻quark-diquark Nambu-Bethe-Salpeter (NBS) 波動関数がSchroedinger方程式を満たすことを要請して、quark-diquarkポテンシャルを求める。この際、QCDのカラー閉じ込めのため、diquark質量を定量的に求めることは容易でない。ここでは、負パリティセクタのΛc励起スペクトルを再現することを要請して、自己無頓着にdiquark質量を決定する方針を取る。
JLDG/ILDGから公開中の32^3x64格子上でPACS-CS Coll.によって生成された 2+1 flavor QCD ゲージ配位(pion質量が約700 MeVの物)を用いて実際にこのアルゴリズムを実行し、クーロンゲージ固定の元で同時刻 NBS波動関数を求め、それに基づいてscalardiquark 質量とquark-diquark間ポテンシャルを求めた。(charm quark質量は、同じアルゴリズムをcharmonium系に適用して求めたものを使った)その結果、自然で合理的な結果が得られた。(1) 定性的に自然なscalar diquark質量が得られた(構成クォーク質量をnaiveに見積もったもの(2/3倍の核子質量やrho meson質量)の2倍と定性的に一致) (2) Cornell型のquark-diquark間ポテンシャルが得られた。(2.1) 長距離での閉じ込めの振る舞いは、qqbar セクタの振る舞いと定性的に一致。(2.2) 近距離の振る舞いはCoulomb型であるが、qqbarセクタと比べて弱くなっており、これはdiquarkが有限の大きさを持っていることと定性的に合致している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
良い結果を伴って概ね順調に進んでいる。これは学生との共同研究として進めていたが、就職活動に利用するためと言って準備中の不完全な論文を一週間でsubmitしようとしたため、著者からは外れた。(謝辞では本科研費について言及がある。論文自体はPhysical Review Dにacceptされている)
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今後の研究の推進方策 |
今回の計算は先行研究と同様にCoulombゲージ固定を用いて行った。しかしながら、Coulombゲージはくりこみ可能性に問題がある。このため、くりこみ可能性が明白である Landauゲージ固定に変更することを考えている。他研究グループによってLandauゲージは、diquarkの2点関数からdiquark質量を引き出すことに使われている(これは正当化はカラー閉じ込めのためまだ不十分に思える)。そのように定義されたdiquark質量と、我々の方法で定義されたdiquark質量の間の関係について調べてみたい。今後は、pion質量が570 MeV, 410MeVのゲージ配位を用いて計算して、クォーク質量依存性を確かめるとともに、正パリティの励起状態についても調べる。また、axial-vector diquarkを含むΣc系への拡張を進める。scalar diquarkとaxial-vector diquarkは、ハドロン物理現象論において重要な役割を演じることが予想されているため、この2つについてはどうしても調べる必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの関係で旅費を全く使わなくてすんだ。
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